2023年09月01日

医療事務のお仕事内容について知ろう

医療業界では人手不足が続いているため、探してみると多くの求人情報が見つかることでしょう。そのなかでも女性を中心に人気があるのが医療事務のお仕事です。主なお仕事内容と1日の流れについて見てみましょう。

医療事務とは?

医療事務とはその名のとおり、医療機関(病院や診療所など)で行われる事務全般のことを指し、そのお仕事に従事する人を含めて「医療事務」と呼ぶのが一般的です。また、医療事務のお仕事に従事する人のことを「医療事務員」「医療事務スタッフ」と称する場合もあります。

医療事務のお仕事の種類と特徴

医療事務のお仕事には、大きく分けると「受付業務」「会計業務」「レセプト業務」「クラーク業務」の4つの業務があります。医療事務は医療保険にかかわる専門職であるとともに、受付で患者様に応対する機会も非常に多いため、知識やスキルと同様にコミュニケーション能力が問われる職種だといえます。

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受付業務

受付窓口で、来院された患者様の応対を行うのが、受付業務です。診察券・保険証の確認や、来院理由をたずねるなどの簡単な問診、初診の方への用紙の記入依頼などを行います。受付業務は「病院の顔」とも言われ、医療機関の印象を左右することもありますので、明るく親切で丁寧な応対が求められます。

会計業務

カルテに記載された診療内容をもとに、患者様の医療費を計算します。電子カルテを導入している病院やクリニックでは自動で金額が算出されますが、最終的にミスがないかをしっかりチェックする必要があります。患者様への請求金額が確定したら、窓口や精算機での会計をご案内します。

レセプト業務

患者様が加入している健康保険組合や共済組合、市区町村などの保険者に、患者様の自己負担分以外の診療費用を請求するために必要なのが、「レセプト(診療報酬明細書)」の作成業務です。最近ではICT化が進み、コンピュータ入力によって算出された明細書の点検や確認が主となります。レセプトが正しく作成されているかを確認するには、複雑な算定ルールの理解と、診療行為や処方薬についての正しい知識が必要で、不備や間違いがないよう細心の注意を払って業務にあたることが求められます。

クラーク業務

医師や看護師をサポートして、診療や処置の準備、カルテの入力代行や管理、患者様やご家族への応対などを行うのが、クラーク業務です。大きく分けて、外来の患者様への応対や検査の準備にあたる「外来クラーク」と、入院に関する事務作業などを扱う「病棟クラーク」の2つがあります。医師や看護師のように医療行為を行うことはありませんが、医療スタッフと患者様の間に立って円滑な医療を支える、医療機関にとって大切な業務の1つだと言えます。

医療事務のお仕事の1日のスケジュール

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医療事務のお仕事に対する理解を深めていただくために、1日のお仕事の流れの一例をご紹介します。勤務形態や勤務先によって詳細は異なりますが、参考にしてください。ここではクリニックでの1日をご紹介します。

[8:30]出勤・清掃

9時から診療を開始するクリニックの場合、医療事務員(医療事務スタッフ)はその30分前には出勤して患者様を迎えるための準備を行います。

出勤後、制服に着替えたら玄関や受付、待合室・診察室などの院内清掃を行います。必ずしも病院・クリニックに限ったことではありませんが、気持ちよく1日をはじめるためのスタートとして、まずは清掃を行うのが一般的です。

[9:00]午前診療の開始

診療時間中の主な業務は、受付での患者様応対になります。患者様の受付や問診、診察のご案内のほか、会計や電話応対などを行います。

[12:00]午前診療の受付終了

午前診療の受付が12時に終了し、診察中の患者様、会計待ちの患者様がいなくなったら待合室の片づけを行い、昼休みに入ります。

[14:00]午後診療の開始

午前と同じように、患者様の応対を行います。患者様の受付や問診、診察のご案内、会計や電話応対などを行います。

[18:00]午後診療の受付終了

すべての患者様の診察と会計が終了したら、清掃を行い、その日の業務は終了です。残業は比較的少ない職種です。

月末から翌月10日頃まではレセプト業務が発生

ほとんどの患者様が保険証を提示して診療を受けますが、窓口で支払うのは実際にかかった医療費の3割※で、残りの7割は医療機関が健康保険組合、共済組合、市区町村などの保険者に対して月に一度、請求を行います。レセプトは、医療機関が患者様の自己負担分以外の医療費を請求する明細書であり、診療の内容ごとに診療報酬が全て点数化されているのが特徴です。なお、このレセプト作成は毎月月末から翌月10日頃までに実施する必要がありますので、その期間中、医療事務員(医療事務スタッフ)は診察終了後にレセプト作成・点検を行います。
※患者様の自己負担の割合は、保険証の種類・年齢などによって異なります。

医療事務のお仕事のやりがいとメリットとは

一般的な事務職と少し異なる面がある医療事務のお仕事には、ほかのお仕事では得にくい充実感や、医療事務ならではのメリットを得られることがあります。たとえば、次のような点です。

1.患者様から直接感謝される機会がある

医療機関の一員として働くことで、誰かの役に立っているという充実感を味わえます。会計業務などで患者様と接する際に、「ありがとう」「楽になった」などと感謝の言葉をいただくこともあり、それも大きなやりがいの1つと言えるでしょう。

2.職場が全国各地にあり、自宅近くで働ける可能性がある

病院やクリニックは日本国内の至るところにあるので、職住近接の働き方がしたい人には最適なお仕事です。もし転居することになっても、医療事務の経験があれば、転居先で新しい職場を探して再就職することが容易です。

3.ライフスタイルに合わせて働きやすい

医療事務の勤務形態は、正職員、契約職員、パート・アルバイト、派遣など、医療機関によってさまざまなので、ライフスタイルに合わせて多様な働き方が可能です。また、職場の特性から、ほかの一般的な事務職と比べて、残業が比較的少ない傾向にあることもメリットの1つです。たとえば、育児や介護などと両立させて働きたいと考えている人にとっては、比較的働きやすい業種だと言えるでしょう。

4.専門知識が身につく

レセプト業務やクラーク業務では、具体的な症状や処置の名称などを耳にしたり、自分でコンピュータに入力したりすることがあります。初めは難しそうだと感じても、内容を理解することができれば、生きた知識となるでしょう。また、医療機関で医師や看護師などの医療スタッフと一緒に働くことで、健康管理についての幅広い知識を得られるといったメリットもあります。

医療事務になるには

医療事務として働くには、医療機関の求人に直接応募するか、医療機関が医療事務の業務を委託している「医療事務代行会社」に就職する、あるいは、医療事務関連の人材派遣会社に登録するのが一般的です。未経験者でも可としている求人もあるようです。

また、医療事務には、医師や看護師のような国家資格は存在しません。医療事務に関する民間の資格は複数ありますが、それらは医療事務に必要な知識やスキルがあることを証明するもので、取得しなければ働くことができないという資格ではありません。そのため、医療事務の求人には「無資格可」としているものも少なからず見られます。

しかし、医療事務は高い専門知識と対応力が求められるお仕事です。そのため、過去に医療事務として働いていた経験者や、専門学校などで医療事務の勉強をしている人のほうが、採用が有利になることは間違いありません。「医療事務の職務経験はないけれど、医療事務として働きたい」という人は、ぜひ資格を取っておきたいところです。

医療事務の資格を取得するための勉強方法には、「専門学校や通学制のスクールに通って学ぶ」「通信教育講座を受講する」「独学で学ぶ」の3つがあります。効率よく学習を進めて、着実に資格の取得を目指すのであれば、専門学校や通学制のスクールか、通信教育講座を選択するのがよいでしょう。それぞれの学習方法については、次の関連記事で詳しく説明していますので、ぜひご一読ください。

[関連記事]
国家資格ではないものの、医療事務の資格を取得する5つのメリット
医療事務の資格試験はどんな内容?受験のための流れは?
医療事務の資格を取るための勉強方法は?独学でも取得できるの?

医療事務の勤務先について

医療事務の主な勤務先には、次の3種類があります。

病院

法律(医療法)では、病院は、「20床(ベッド)以上の入院施設を持つ医療機関」と定められています。「入院することができる、比較的大きな医療機関」は病院だと理解しておけばよいでしょう。規模が大きいことで、来院する患者様や働くスタッフの数も増えるため、医療事務のお仕事も役割を割り振られて分業することが多いようです。

クリニック(診療所)

一方、「入院施設が19床(ベッド)以下」または入院施設を持たない小さな医療機関は、診療所やクリニックなどと呼ばれます。病院に比べると小規模で、働くスタッフの人数が限られるため、医療事務のお仕事も分業せずに、少人数で広範囲の業務をカバーする傾向にあります。

健診センターや保健センター

クリニック(診療所)のなかでも、特に健康診断などに特化した健診(検診)センターや、主に地方自治体が住民の健康増進のために設置する保健センターなどでも、医療事務が活躍しています。

医療事務のキャリアとは?

同じ医療機関でも、病院とクリニックでは、扱う仕事の量や範囲が異なります。そのため、日々の仕事を通じて身につけられるスキルや、描くことができる将来像も違ってくるでしょう。それぞれ、どのように成長できるのでしょうか。

病院でお仕事に就く場合

クリニックに比べて規模が大きい病院では、医療事務の人数も多く、複数の部署を設けて役割を分担している場合が多いようです。また、病院ではクリニックよりも高度な医療処置を行ったり、特殊な症例を扱ったりすることがあるため、医療事務のお仕事も、クリニックに比べて専門性が高くなる傾向があります。配属された部署の業務に習熟し、「この業務なら自信がある」という分野をつくりたい人にとっては、スキルアップに適した職場だと言えるでしょう。

クリニックでお仕事に就く場合

一方、クリニックは病院よりも規模が小さく、医療事務の人数も限られます。そのため、受付・応対業務や会計業務、レセプト業務など、広範囲にわたる業務の全般を担当することが多いようです。覚えることが多くて大変ですが、それだけに、医療事務全体の幅広い知識やスキルを身につけられるでしょう。また、規模が小さいことから、医師や看護師などの医療スタッフや他の医療事務との距離感も、より近くなると言えます。同じ職場の人たちと人間関係を築き、長期にわたって活躍したいと考えている人ならば、将来をイメージしやすいかもしれません。

関連資格を取得し、より専門的なお仕事に

「医療事務技能審査試験(メディカル クラーク®)」のような、医療事務の資格のほかにも、さまざまな医療事務に関連する資格があります。たとえば、診断書作成や検査予約など医師の事務作業を代行する「医師事務作業補助者」として活躍できる知識、スキルがあることを証明する「医師事務作業補助技能認定試験」などです。こうした関連資格の取得にチャレンジし、さらに専門性の高いお仕事を目指すのも、医療事務としてキャリアアップする道の1つでしょう。

大変だけどやりがいのある医療事務のお仕事

医療事務の日々のお仕事の中心は患者様応対ですが、患者様応対は、体調不良の方やそのご家族などが対象ですから、一般的なサービス業の接客とは異なる難しさがあります。また、月末から翌月10日頃にかけては、医療機関の収入を決めるレセプト作成・点検が発生します。高い専門性や臨機応変な対応力が求められるとともに、責任感を持って取り組む必要があるなど大変な面もありますが、何よりも患者様の役に立っている、患者様に頼りにされるというやりがいを感じられるお仕事です。未経験の人や資格を持っていない人にも入り口は開かれていますので、ぜひ挑戦してみてはいかがでしょうか。

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[初回公開日 2019年12月26日]

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