2023年11月01日

医療事務の資格を取るための勉強方法は?独学でも取得できるの?

社会の高齢化が進むにつれ、ますます医療の重要性が高まっています。また、それに伴い、医療事務の人気も高まっています。一度取得した専門知識はずっと活かすことができるので、子育てや親の介護、引越しなどの生活の変化があっても再就職しやすいというのが、人気の理由です。ここでは、医療事務の資格取得を目指す方に向けて、独学でも取得できるのかという点や、独学のメリット・デメリットのほか、主な医療事務資格試験の合格率について、ご紹介します。

医療事務の資格は、独学でも取得できる?

医療事務は国家資格ではなく民間資格です。民間団体が認定する資格がいくつか存在しますが、代表的な資格の1つに、一般財団法人 日本医療教育財団が認定する「メディカル クラーク®(医療事務技能審査試験)」があります。これまでの総受験者数が170万人を超える医療事務分野で最大規模の試験(当該財団ホームページより)とされていますが、受験資格は不問で、学歴や実務経験にかかわらず、独学でもチャレンジすることは可能です。

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試験の内容は「実技Ⅰ...患者接遇/筆記(記述式)/2問/50分」「学科...医療事務知識/筆記(択一式)/25問/60分」「実技II...診療報酬請求事務/診療報酬明細書点検/4問/70分」となっており、学科試験および実技試験Ⅰ・Ⅱのすべての得点率が70%に達した時点で合格となります。試験ではテキストの参照が可能ですので、比較的取得しやすい資格といえるでしょう。

医療事務の資格試験は難しい?

医療事務の資格試験の出題形式や、出題される内容、難易度は、それぞれの資格によって異なります。なかにはテキストを参照しながら解答できる試験や、在宅受験ができる試験もあり、難関というわけではありません。初めて受験する方でも、しっかりと知識を身につけ、受験対策を行って臨めば、十分に合格することができるでしょう。
いくつかある医療事務の資格を取得する試験のなかで、一般によく知られている4つについて、試験の概要を紹介します。

医療事務技能審査試験

一般財団法人 日本医療教育財団が主催する資格試験です。主に、医療機関などにおける受付業務や、診療報酬請求事務業務に関する能力が問われ、合格者には「メディカル クラーク®(医科、または歯科)」の称号が与えられます。

医療事務管理士®技能認定試験

株式会社技能認定振興協会(JSMA)が主催する資格試験です。患者様に対する接遇力や、カルテの内容を読み取って、正確にレセプトを作成する能力が問われます。

診療報酬請求事務能力認定試験

公益財団法人 日本医療保険事務協会が主催する資格試験です。医療保険制度やそのほかの法令にかかわる知識が問われ、また、カルテを元に手書きで診療報酬明細書(レセプト)を作成する実技試験もあります。

医療事務認定実務者®試験

全国医療福祉教育協会が主催する資格試験です。医療事務の基本的な知識や、診療報酬明細書(レセプト)作成の基本的な技術が問われます。

医療事務資格試験の合格率

ここで取り上げた医療事務資格試験の、合格率と開催頻度、日程を紹介します。最新の情報は、各試験実施団体のホームページなどで確認してください。

試験名 合格率 ※1 試験実施日程など
医療事務技能審査試験
(日本医療教育財団)
76.1% 毎月1回在宅試験を実施。
医療事務管理士®技能認定試験
(技能認定振興協会)
72.0% 基本的には2ヵ月に1回(臨時開催もあり)の一般会場試験か、いつでも受験できるインターネット試験の2種類がある。
診療報酬請求事務能力認定試験
(日本医療保険事務協会)
36.1% 年に2回(7月・12月)、全国の主要都市の試験会場で実施。
医療事務認定実務者®試験
(全国医療福祉教育協会)
60~80% 毎月1回実施、全国の主要都市で開催される会場試験と在宅試験の2種類がある。
  • ※1:合格率は、各試験実施団体のホームページより、発表されている直近の合格率を抜粋(2023年11月現在)。

医療事務の資格試験に出題される問題の内容

医療事務の資格試験には、筆記試験と実技試験があるのが一般的です。出題される問題の内容は、資格試験によっても異なりますが、どの試験でも概ね次のような問題が出題されると考えてよいでしょう。

学科問題

医療保険制度についての基礎的な知識や、公費負担医療制度、医療費の算定方法、基礎的な医学の知識や用語などについての問題が出題されます。

実技問題

診療報酬明細書(レセプト)作成のスキルや、医療機関の窓口における受付・応対スキルなどを確認する問題が出題されます。

医療事務の資格試験に合格するための勉強内容

医療事務のお仕事内容は、大きく分けると「受付業務」「会計業務」「レセプト業務」の3つがあります。勤務する医療機関によっても異なりますが、一般的な事務のお仕事と比べると、より広範な業務に対応する必要があるといえるでしょう。医療事務の資格試験では、これらの分野の基礎知識や、実務のスキルが問われます。それぞれ、学ぶべき内容を紹介します。

窓口業務に関連する知識・技術

医療機関の窓口で、来院された患者様に応対し、診療の受付を行います。言葉づかいや接遇マナー、服装・身だしなみなど、患者様に安心感を持っていただけるコミュニケーション能力が、医療事務には求められます。しっかりと身につけておきましょう。また、健康保険証の確認など、医療事務に固有の専門的な知識も、窓口業務では必要になりますので、社会保障制度の基本的な知識を身につけておく必要があります。

レセプト業務に関連する知識・技術

医療機関は健康保険組合などに対して、提供した医療行為への対価として、かかった医療費の請求を毎月行います。この請求のために作成するのが「診療報酬明細書(レセプト)」であり、レセプトが正しく作成されているかを点検するのが医療事務の主要な業務の1つです。医療事務の資格試験では、レセプトの作成時に必要な点数を計算するためのルールや、カルテに記載された内容を的確に読み取ってレセプトを作成するスキルが問われるため、正確に身につけておく必要があります。

[興味がある方は、こちらをご覧ください]
医療事務のお仕事内容について知ろう
「レセプト」とは?医療事務の業務内容や役割は?

医療事務の資格を取得するための勉強方法

医療事務の資格取得を目指すための勉強法には、「独学する」「専門学校や通学の講座で学ぶ」「通信教育講座を利用する」の3つがあります。それぞれに長所と短所がありますが、ご自身に合った勉強法を選ぶことが、資格を取得するうえでのポイントになるといえるでしょう。

独学

テキストや問題集などを購入して、自身で学習を進めていく方法です。
今のお仕事や学業と両立させながら、空き時間を使って受験対策を進めたい人にとっては、適した勉強方法だといえるでしょう。一方で、テキスト選びなど、すべて自分で選択しなければなりません。学んでいてわからない点があっても、身近に質問できる相手がいないために、不安を感じることもあるでしょう。また、多くの医療事務資格試験で課せられる実技のスキルを身につけるのも、独学では困難な面があります。

専門学校・通学講座

医療事務を学べる専門学校や、資格スクールなどが開講している医療事務の講座に通って学ぶ方法です。
長所は、わからないことがあっても、すぐに講師に質問することができることです。また、周囲に同じ目的を持った仲間がいることで、刺激を受け、モチベーションを高められるでしょう。
短所は、学習する時間と場所の制約を受けることです。学習にかかる費用も、独学や通信教育と比べると高くなります。

通信教育講座

さまざまな事業者が開講している、通信教育講座を利用して学ぶ方法です。
理解しやすいように工夫された教材で、医療事務の資格取得に必要な知識を、効率よく学習できるのが長所といえます。また、学習ガイドブックなどを参考にしながら、自分のスケジュールに合わせて学習を進めることができます。
一方で、「誰かに言われないと、勉強しようという気持ちになりにくい」という人には、不向きかもしれません。

医療事務資格の独学での勉強方法とメリット・デメリット

先に述べた通り、医療事務の代表的な資格試験である医療事務技能審査試験は、独学でも受験することが可能です。でも、本当に独学で合格できるのか不安に思う方もいるでしょう。ここでは、独学のメリット・デメリットについて説明します。

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独学の勉強方法

まず始めに勉強で使うテキストを探しましょう。資格スクールの講座で勉強する場合は、講座指定のテキストを使用しますが、独学の場合は、資格試験に合格するために何を身につけるべきかを自分で調べることが勉強のスタートとなります。

書店やインターネットで関連書籍を探して、まずは、"医療事務の基礎知識""お仕事がわかる"などのタイトルがついた書籍を読みましょう。問題集などは、その後で選んでもよいと思います。

お仕事内容について理解が進んだら、診療報酬請求事務についての学習参考書は必須です。"診療報酬請求事務の基礎知識" などのタイトルがつけられた書籍で一定の知識を頭に入れたら、"問題集""ドリル" などにチャレンジしましょう。なお、診療報酬は通常2年ごとに改定されるため、最新の改定内容を反映したテキストを選ぶようにしましょう。

テキストを選んだら、学習スケジュールを立てましょう。資格試験の日程と参考書の学習単元を目安にすると考えやすくなります。例えば、試験日が3ヵ月後として、テキストが100ページなら、90日間、1日あたり1~2ページの学習を行えば、必要な学習を完了することができます。複数の参考書や問題集も活用するのであれば、その全部のページ数と期間から、無理のない学習量を想定してみましょう。

医療事務の学習について、少し詳しく解説すると、必要な学習は、次のように大きく3つのステップに分けられます。

第1ステップ:医療保険制度について学習する
医療保険制度が理解できると、医療事務のお仕事の全体像がイメージできます。まずは、医療保険制度のしくみや保険証の種類を覚えましょう。医療保険制度は、国民健康保険など10種類ありますので、これらを正確に見分けてコンピュータに入力できるようになる必要があります。

第2ステップ:診療報酬点数の算定方法を学習する
診療報酬点数は、検査・手術・画像診断など14項目に分類されています。この分類ごとに点数や算定条件が設定されていますので、これを学習し、カルテを見ながら点数を算定する練習を行います。点数の学習は、ボリュームがあるので、1週間に1分類を習得するなど、目標を定めて学習計画を立てることをおすすめします。

第3ステップ:レセプト(診療報酬明細書)の記載ルールを学習する
最後に、医療機関が間違いなく診療報酬点数を請求できるように、カルテを基に、正しいレセプトを作成する練習をしましょう。医療事務の資格試験では、主にこのレセプトに関する知識が求められますので、これらの習得を最終目標として学習を進めていきましょう。

独学のメリット

自分のペースで学ぶことができる
独学のメリットは、自分のペースで学ぶことができるという点です。お仕事や家事・育児と並行して受験を目指す方にとっては、自分の好きな時間に取り組むことができるのはメリットだといえるでしょう。

費用を抑えることができる
独学の場合、参考書・問題集などのテキスト購入にかかる費用と受験料しかかからないため、費用を抑えることができるというのも、独学のメリットの1つです。

独学のデメリット

テキスト選びやスケジューリングをすべて自分一人で行う必要がある
独学の場合、参考書や問題集などのテキストをすべて自身の判断で選定して購入する必要があります。また、学習時間の確保やスケジューリングも意外と大変です。何時から何時までと、あらかじめ決まっているわけではありませんので、仕事や家事・育児の合間に勉強する時間を確保しなければなりません。

質問する相手がいない
通学や通信の教育講座を受講する場合には、わからない点があれば講師に質問することができますが、独学の場合は質問することができないため、すべて自分で調べて解決する必要があります。

実技のスキルを身につけることができない
実技Ⅰの患者接遇や実技IIの診療報酬請求事務/診療報酬明細書点検については、実際にやってみなければイメージがつきにくい点も多く、独学では苦労するポイントです。

独学も可能だけど、通学や通信の教育講座の受講がおすすめ

これまで説明したように、医療事務の代表的な資格の1つである「メディカル クラーク®(医療事務技能審査試験)」は、受験資格が不問なため、独学でも取得することが可能です。ただし、独学には、テキスト選びやスケジューリングをすべて自分一人で行わなければならず、質問・相談ができない、実技スキルが身につけられないというデメリットもあります。

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そのため、未経験の方が医療事務の資格取得を目指すには、やはり通学や通信の教育講座の受講がおすすめです。通学スタイルの講座では医療の現場を知り尽くした経験豊富な講師にいつでも質問・相談することができますし、実技スキルも身につけることができます。また、同じ目標を持ったクラスメイトがいるので、お互いに励まし合いながら学ぶことができます。

通信教育講座であれば、好きな時間や場所で学習できる独学のメリットを維持しながら、講師による添削やアドバイスを受けることもできます。

独学では、まずテキストを選ぶことに多くの時間を費やすことでしょう。実際にテキストを手に取ってみると、学習すべき内容の多さに圧倒され、スタート時点で戸惑ってしまう方も多いかもしれません。その点、講座を受講する場合、わかりやすくまとめられたテキストで学習することができます。また、講師がいることで、多岐にわたる学習項目のなかから必要なポイントを整理し、効率のよい学習方法でリードしてくれますので、学習成果として独学に比べ、大きな差がつくといえるかもしれません。

これらを踏まえると、医療事務の資格取得を目指すには、独学よりも通学や通信の教育講座の受講がおすすめです。ぜひ医療事務講座(医科)を受講して、医療事務への一歩を踏み出しましょう。


[初回公開日 2018年06月12日]

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