2023年11月16日

福祉の仕事に就ける資格にはどんなものがある?福祉系資格一覧とおすすめを紹介

人びとの生活の安定や幸福に寄与する「福祉」のお仕事は、誰かの役に立つことができるやりがいのあるお仕事。福祉のお仕事に就くためには、何らかの「資格」が必要なことが多く、その範囲や種類は多岐にわたっています。そこで今回は、福祉領域にはどのようなお仕事があり、そのお仕事をするために、どのような資格が必要なのかをご紹介します。

福祉の資格にはどんな種類がある?

公益性が高い福祉のお仕事は多岐にわたりますが、ここでは概ね次の3つの系統に分けて考えたいと思います。なお、分類の仕方は一例です。
・介護系の資格
・相談援助系の資格
・障がい者福祉系の資格

主だった福祉の資格をこれらの分類に区分してご紹介しますが、複数の資格を取得することで、より多角的に福祉サービスに携わる働き方ができたり、専門性をさらに高められたりしますので、まずは幅広く資格についての知識を得ておくことをおすすめします。

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介護系の資格一覧

介護系の資格は、高齢者や障がいのある人がその人らしい日常生活を送れるように支援・サポートを行う知識や技術を有することの証明となります。介護の領域には「介護保険」が適用されるサービスがあり、その公的介護保険サービスを提供する専門知識や技術を持った従事者が多く必要とされています。超高齢社会を迎えたこれから、介護系の資格を持つ人材はますます需要が高まるものと考えられます。

◆介護職員初任者研修(旧ホームヘルパー2級)

介護の基礎知識や技術を習得する研修です。介護職員初任者研修を受講して修了することで、食事・更衣・入浴介助など、高齢者や障がい者に専門的なサポートを行う基礎知識や介護技術を身につけていることが証明され、訪問介護やデイサービスのほか有料老人ホームなどの居住系介護事業所で、介護職員として働くことができます。

◆介護福祉士実務者研修

2016年度より、介護福祉士国家試験を「実務経験ルート」で受験するために、3年以上の実務経験に加えて、この介護福祉士実務者研修の修了が必須となっています。研修では、介護の基礎知識や技術のほか、これまで医師や看護師に限り認められていた、たん吸引や経管栄養について学ぶなど、より専門的・実践的な知識と技術を習得することができます。また、介護福祉士実務者研修を受講して修了することで、訪問介護の計画立案や実施管理を担う「サービス提供責任者」として必要な知識と技術を有することが証明されます。

◆介護福祉士

介護系の資格のなかで唯一の国家資格で、高齢者や障がいのある人の介助・支援を行う介護のスペシャリストの証となる資格です。資格を取得すると、介護に関する専門的で高度な知識・技術を有していることを証明でき、就職時・転職時の待遇面でも有利になります。
介護福祉士は、介護現場で介護職員として活躍しながら、現場スタッフへの教育・指導を担うことも多く、習得した知識と技術を活用して、訪問介護のサービス提供責任者として働くことができるほか、有料老人ホームのフロアリーダーを務めることもできます。介護の分野で責任ある立場や管理職としての活躍が期待される資格なので、介護職員初任者研修(旧ホームヘルパー2級)を修了した人が、次に目指すキャリアパスの目標として掲げることの多い資格です。

◆ケアマネジャー(ケアマネージャー)

ケアマネジャー(ケアマネージャー)は、「介護支援専門員」が正式名称です。介護保険サービス利用者一人ひとりに合わせた「ケアプランの作成」、介護給付費の適正利用をチェックする「給付管理業務」、高齢者や障がい者の「要介護認定の申請代行業務」など、専門性の高い業務を行います。
ケアマネジャー(ケアマネージャー)になるためには、介護支援専門員実務研修受講試験に合格し、実務研修を修了しなければなりません。

◆介護事務

介護事務の資格は、主に介護給付費請求業務(レセプト作成)を行う専門知識やスキルを備えていることの証明となります。訪問介護やデイサービスのほか、居住系の介護事業所などで、事務職として活躍できます。

◆介護予防運動指導員

介護予防運動指導員は、高齢者の要介護状態の軽減や悪化の防止を目的として介護予防プログラムの作成や運動指導を行い、自立した生活を送れるように適切なサポートを行います。「地方独立行政法人 東京都健康長寿医療センター」のノウハウにもとづく研修を受講し修了することで、介護予防運動指導員の登録証が交付され、高齢者の転倒予防・尿失禁予防・栄養改善・口腔機能向上・認知症予防などに貢献するお仕事で活躍できます。

◆福祉用具専門相談員

福祉用具専門相談員は、要介護者が介護保険を使って福祉用具を利用する際に、身体状況や生活環境に応じて必要な福祉用具を選定し、その福祉用具の適切な利用方法をアドバイスします。「福祉用具専門相談員指定講習」を受講し、修了試験に合格することで資格を取得できます。また、特定の福祉系資格を有する人も福祉用具専門相談員の業務を行うことができます。

◆福祉住環境コーディネーター

福祉住環境コーディネーターは、高齢者や障がいのある人が、安全に、かつ安心して暮らせる住環境を提案します。民間資格ですが、活躍できる範囲は広く、福祉だけでなく医療分野や行政、設計・施工などの隣接領域での活躍も期待できます。

◆認知症介護基礎研修

認知症介護基礎研修は「認知症の人の理解と対応の基本」を学ぶ公的な研修です。2021年4月の介護報酬改定で、介護職員初任者研修などの公的研修を修了している人や、医療福祉分野の国家資格を取得している人を除き、直接介護に関わるすべての職員に対して受講が義務付けられました。3年の経過措置期間が設けられていますが、2024年4月からは、無資格で認知症介護基礎研修を未受講の場合は、介護職として働くことができなくなります。研修は1日で修了可能で、費用は1,000~5,000円程度かかります。

介護系の資格のおすすめ

介護職員初任者研修(旧ホームヘルパー2級)

介護の入門資格といわれる介護職員初任者研修では、介護職に必要な基礎知識と技術を身につけます。研修は座学と演習を組み合わせて行い、介護施設での実習はありません。
研修時間は計130時間で、厚生労働省が定めた10科目を学びます。取得方法には、一部を通信で学ぶ「通信+通学」と「通学」があります。通信で学べるのは最大40.5時間までと定められているため、通信のみでは取得できません。
修了後に筆記試験を受け、ほとんどの場合、正答率が70%以上であれば合格となります。基準を下回ったとしても再試験や補講が行われることが多く、比較的チャレンジしやすい資格です。

介護福祉士実務者研修

介護福祉士実務者研修は介護職員初任者研修よりも、さらに実践で役立つ専門的な知識と技術を習得する研修です。2016年度からは、介護福祉士実務者研修の修了が介護福祉士国家試験の受験条件となっています(実務経験ルートで受験する場合)。
研修では、20科目を計450時間で学びます。修了まで最短6ヵ月程度かかるとされていますが、保有している介護の資格によって受講科目が免除され、その分、研修期間も短縮されます。こちらも座学と演習を「通信+通学」または「通学」で学ぶのが一般的です。ただし「介護過程III」と「医療的ケア」は、必ず通学(7日間ほど)しなければなりません。
修了試験は義務付けられていませんが、理解を深めるために実施している養成校もあります。また「介護過程III」の修了評価として、講師の前で一人ずつ実技試験が行われます。どちらの試験も、それまで学んだことを振り返れば合格できる内容ですので、受講内容をしっかり理解しておきましょう。

相談援助系の資格一覧

相談援助系の資格は、身体的・精神的・経済的にハンディキャップがある人からの相談を受けたり、指導や助言をしたりする知識や技能を有することを証明する資格です。

◆社会福祉士

社会福祉士は、社会福祉協議会や社会福祉施設、病院、地域包括支援センターなどに所属し、在宅・施設で生活している人の相談に応じ、必要な助言や利用可能な制度・サービスの紹介、利用調整などを行います。取得するには養成課程を修了し、年1回の社会福祉士国家試験に合格・登録する必要があります。

◆臨床心理士

臨床心理士の資格は、臨床心理学に基づいて、人の心の問題に取り組む専門家であることの証明です。福祉の領域においては、障がい児・者、高齢者の問題のほか、子どもの心身の発達、非行、女性の問題など幅広い問題に対して、心理的側面から支援するお仕事に就くことができます。臨床心理士になるには、臨床心理士養成に関する指定大学院・専門職大学院を修了するなどの受験資格要件をクリアすることが必要です。

◆公認心理師

公認心理師は、心の問題を抱えている人やその周囲の人に対して、その問題を解決するために相談、助言、援助を行う国家資格です。臨床心理士と重なる点も多くありますが、これまでの「心理士」資格と大きく異なるのは、他の心理士資格が民間資格であるのに対して、「公認心理師」は、2017年に公認心理法が施行され、日本初の心理職の国家資格として誕生している点です。

◆精神保健福祉士

精神保健福祉士は、こころに病をもつ人に、社会福祉学に基づいて、医療機関や福祉行政機関、相談支援事業所や地域活動支援センターなどで、社会復帰や社会参加支援に取り組む専門家であることを証明する資格です。社会福祉士の領域と重なることも多いため、精神保健福祉士と社会福祉士両方の資格を取得することで、活躍の場をさらに広げるケースもあるようです。養成課程を修了し、年1回の精神保健福祉士国家試験に合格・登録する必要があります。

◆社会福祉主事任用資格

社会福祉主事任用資格は、福祉事務所の職員として働くために必要な資格です。取得することで、国家資格である社会福祉士とほぼ同じ業務が行えるようになります。専門的な知識を有している証明になるため、福祉事務所のほか、介護施設や福祉施設、病院、地域包括支援センターなどで相談援助業務に携わることが可能です。取得するには大学や指定された通信課程、養成機関などで履修科目を修了する、または都道府県などが実施する講習会の受講が必要になります。

相談援助系の資格のおすすめ

社会福祉士

社会福祉士になるためには、受験資格を得て、年1回の国家試験に合格する必要があります。合格後に登録申請を行うことで、社会福祉士の取得が可能です。受験資格を得るには、福祉系大学、短期養成施設、一般養成施設などで指定科目を履修する、履修に加え実務経験を積むなど12のルートがあります。
国家試験は筆記試験のみで、設問は5つの中から正しいものを選択する形式です。合格基準は150点満点中60%程度ですが、試験科目の出題範囲が広く、18科目群すべてにおいて得点していることが必条件となります。

精神保健福祉士

精神保健福祉士になるためは、受験資格を得て、年1回の国家試験に合格する必要があります。合格後に登録申請を行うことで、精神保健福祉士の資格が可能です。受験資格を得るには、大学で指定科目を履修する(短大などの場合は履修プラス1~2年の実務経験)、養成施設を経るなど、経歴によりさまざまなルートがあります。
社会福祉士と同じく、国家試験は筆記試験のみで、5つの選択肢から正しいものを選ぶ形式です。合格基準は163点満点中60%程度で、16科目群すべてにおいて得点していることが条件となります。

障がい者福祉系の資格一覧

障がい者福祉系の資格は、病院やリハビリテーション施設、社会福祉施設、その他施設で従事し、心身に障がいをもつ人に対して福祉サービスを提供する知識や技能を有することを証明する資格です。

◆手話通訳士

聴覚障がいを持つ人に付き添い、手話を用いて、ほかの人との円滑なコミュニケーションをサポートして、社会への参加を支援する知識と技能を証明する資格です。手話を学び、社会貢献することは資格がなくてもできますし、民間の資格もいくつか存在しますが、手話通訳士は、厚生労働省が認定する公的資格で、試験に合格すると、「社会福祉法人 聴力障害者情報センター」の手話通訳士名簿に登録することができます。

◆理学療法士

「PT(Physical Therapist)」とも称される理学療法士は、身体障がいのある人が日常生活に必要な基本的な動作能力を改善・回復できるよう、医師の指示のもとに、治療や運動、電気刺激、マッサージ、温熱その他の物理的手段を通して理学療法を行う国家資格です。養成課程を修了し、年1回の理学療法士国家試験に合格・登録する必要があります。

◆作業療法士

作業療法士は「OT(Occupational Therapist)」とも呼ばれ、医師の指示のもと、障がい者の状態・状況に応じて、手芸や工作などを通じた生活・お仕事などに関わる諸機能の回復・維持、開発を促す知識と技能を有することを証明する国家資格です。養成課程を修了し、年1回の作業療法士国家試験に合格・登録する必要があります。

◆言語聴覚士

言語聴覚士は「ST(Speech Therapist)」とも呼ばれ、音声機能、言語機能、聴覚に障がいのある人に対して、医師・歯科医師の指示のもと、聴力・音声機能・言語機能のほか、摂食や嚥下障害の問題解決に向けた検査・訓練・助言などの支援を行う知識、技能を有することを証明する国家資格です。養成課程を修了し、年1回の言語聴覚士国家試験に合格・登録する必要があります。

◆義肢装具士

義肢装具士は、主に民間の義肢装具製作事業所に所属し、医師の指示のもと、義肢・装具の装着部位の採型や、義肢・装具の製作・身体への適合を行う国家資格です。養成課程を修了することで受験資格が得られます。

障がい者福祉系の資格のおすすめ

作業療法士

作業療法士の資格は、年1回の国家試験に合格し、登録申請を行うことで取得できます。受験資格を得るには、高校卒業後に国が指定した作業療法士養成課程のある大学・短大・養成施設などで3年以上学び、知識や技能を修得して卒業する必要があります。理学療法士の資格を保有している場合は、養成校で2年以上学べば受験資格を得ることが可能です。
試験は筆記のみで、解剖学、生理学などの一般問題160問、臨床心理学などの実地問題40問の計200問が出題されます。配点は一般問題が1問1点、実地問題が1問3点で、総得点の60%、実地問題の35%の得点が、おおよその合格基準です。2023年(第58回)では、総得点279点中168点以上、そのうち実地問題120点中43点以上を満たしていれば合格とされています。2019年(第54回)から2023年(第58回)までの合格率は70~80%台と、比較的高く推移しています。

理学療法士

理学療法士の資格は、受験資格を得て年1回の国家試験に合格し、登録申請を行うことで取得可能です。受験資格を得るには、作業療法士と同様に、高校卒業後に国が指定した理学療法士養成課程のある大学・短大・養成施設などで3年以上学び、知識や技能を修得して卒業する必要があります。作業療法士の資格を保有している場合は、養成校で2年以上学べば受験資格を得ることができます。
試験は作業療法士と同様、一般問題160問(1問1点)と実地問題40問(1問3点)で構成されています。おおよその合格基準は、総得点の60%、実地問題の35%の得点です。2023年(第58回)では、総得点278点中167点以上、そのうち実地問題は120点中43点以上を満たしていれば合格とされています。2019年(第54回)から2023年(第58回)までの合格率はこちらも70~80%台と、高い推移を保っています。

誰でも受けられて比較的取りやすい福祉系の資格とは?

福祉系の資格には、学歴や実務経験などの受験資格が限定されておらず、比較的取得しやすいものがあります。

◆介護職員初任者研修(旧ホームヘルパー2級)

介護職員初任者研修は、2013年にホームヘルパー2級が廃止され、新しく誕生した介護の入門資格です。介護職員として働くために必要な知識と技術が習得できるため、未経験から介護職に就きたい人におすすめの資格です。
取得には、厚生労働省が示す指針の下、各都道府県から指定を受けた養成校が実施する研修を受講し、修了試験に合格する必要があります。各養成校では、通学または通学と通信を組み合わせた研修を行っています。養成校によっては、通学する頻度や曜日・時間帯などのクラス選択が可能な場合がありますので、働きながら取得を目指したい方は「土曜日のみ」や「夜間」のクラス、早く取得したい方は「週2~3回」のクラスなどと、自分の都合に合わせて選ぶことも可能です。
研修の受講期間は養成校のクラス設定によりますが、週1回の通学の場合、4ヵ月~半年ほどかかります。養成校によっては、「通信と通学」の組み合わせ学習で、最短1.5ヵ月での修了も可能です。修了後に筆記試験がありますが、落とすための試験ではなく、研修内容を振り返るためのものです。再試験や補習もあるため合格率が高く、チャレンジしやすい資格といえます。

◆介護事務

介護事務は、介護事業所での介護報酬の請求に関する業務を中心に、電話対応、勤怠管理などの事務業務を行うお仕事です。介護には自信がないけれど介護事業所でお仕事をしたい人、介護・事務の両方の経験を活かしたい人に向いています。資格を取得していることで基本的な知識とスキルがある証明になるため、これから介護事務のお仕事を考えている人だけではなく、すでに介護事業所でのデスクワークをされている人が転職をする際にもおすすめの資格です。
介護事務の資格はいわゆる民間資格で、いくつかの民間団体が資格の認定試験を実施しています。資格試験が年複数回ある場合が多いため、受験のチャンスが多いのも特徴です。資格を取得するには、さまざまな資格スクールが介護事務の資格取得をサポートする教育講座を開講していますので、受講しやすい講座を探しましょう。自分のペースに合わせて続けやすい「通信教育」なら、お仕事や家事・育児と両立しながら資格取得を目指せます。

福祉の仕事を目指す方へ

福祉領域のお仕事は、その多くが知識や技能を有することの証明である「資格」を求められる職種で、従事するためには資格取得のための学習が必要となります。「資格」を取得することで、就業のチャンスが広がったり、スキルアップによって待遇面での優遇が得られたりするメリットがあります。また、さまざまな人の役に立てる専門家として活躍できることは、社会に貢献したいという気持ちの強い、福祉関係のお仕事を目指す方々にとっては、やりがいや充実感にもつながります。まずは自分自身がどのように社会に貢献したいかを想い描き、その姿を叶えられる資格とは何か、幅広く調べてみましょう。希望の資格がはっきりしたら、取得に向けて、どんな講座や研修があるのか、検討をはじめてみてください。

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[初回公開日 2019年12月02日]

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