2023年07月03日

介護福祉士国家試験の実技試験は廃止されたの?

「介護福祉士」の国家試験には「筆記試験」と「実技試験」がありますが、試験制度が改定されたことで、2016年度(第29回)試験より、大半の受験者は実技試験が免除になっています。実技試験が免除になるかどうかは、介護福祉士を目指すルートによって異なります。介護福祉士の実技試験について、最新の情報を確認しておきましょう。

介護福祉士国家試験とは

国家資格である「介護福祉士」の資格を得るためには、「社会福祉士及び介護福祉士法」に基づき実施される「介護福祉士国家試験」を受験し、合格する必要があります。試験には「筆記試験」と「実技試験」があります。

cl038_01.jpg


介護福祉士国家試験の受験資格

介護福祉士国家試験を受験するには、定められた受験資格を満たす必要がありますが、その受験資格は、介護福祉士の資格をどのようなルートで取得しようとしているかによって異なります。受験を考えている人は、はじめに自分がどのルートで取得予定なのかを理解して、そのルートに定められた受験資格を満たしているか確認する必要があります。

介護福祉士の資格取得ルートは、次の4つですが、介護福祉士を目指す人の大半は「実務経験ルート」で介護福祉士国家試験を受験しています。

◆実務経験ルート

介護の実務経験を活かして、介護福祉士の資格を取得するルートです。介護などの業務に従事し、実務経験が3年以上かつ450時間の「介護福祉士実務者研修」の修了、または「介護職員基礎研修」と「喀痰吸引等研修」の両方の修了が、このルートでの受験の要件となります。受験者の9割近くは、この実務経験ルートで介護福祉士国家試験を受験しています。
なお、実務経験については、対象となる施設(事業)および職種での従業期間が3年(1,095日)以上、かつ従事日数が540日以上であることが条件となります。

◆養成施設ルート

厚生労働大臣指定の四年制大学、短期大学、専門学校などの課程を修了することで受験資格が得られるルートです。養成施設に通う期間は次の通りです。

・普通科の高校を卒業している人:2年以上
・福祉系大学、社会福祉士養成施設、保育士養成施設のいずれかを卒業している人:1年以上

◆福祉系高校ルート

福祉系の高等学校の課程を修了している場合に受験資格が得られるルートです。ただし、年度のカリキュラムによって試験方法が多少異なりますので、後に説明する、実技試験の免除の条件をよく確認しましょう。

◆経済連携協定(EPA)ルート

経済連携協定に基づいて、インドネシア人、フィリピン人、ベトナム人が、指定の研修を受けながら就労し、3年以上の実務経験を積んで、日本の介護福祉士資格取得を目指すルートです。



実技試験の免除

介護福祉士国家試験の実技試験は、一定の条件を満たしていれば免除対象になります。実技試験が免除されるかどうかは、先ほど説明した4つのルートによって以下のように定められています。

◆実務経験ルート

「介護福祉士実務者研修」の修了、または「介護職員基礎研修」と「喀痰吸引等研修」の両方の修了が必須となり、実技試験が免除されます。

◆養成施設ルート

実技試験が免除されます。また、2021年度末までに養成施設を卒業する場合には、国家試験を未受験または不合格でも、卒業後5年間の期限付きで介護福祉士になることができます。また、この5年の間に国家試験に合格または卒業後5年間続けて介護などの業務に従事すると、5年経過後も介護福祉士の登録を継続できます。

◆福祉系高校ルート

2009年度以降の入学者で新カリキュラムを受けている人は、実技試験が免除されます。

◆経済連携協定(EPA)ルート

「介護技術講習」または「介護福祉士実務者研修」を受講し修了することで、実技試験が免除されます。

このように、4つのルートそれぞれに実技試験免除の規定があり、多くの人が免除されていますが、次のような人は実技試験を受験する必要がありますので、確認しておいてください。

【実技試験を受ける必要がある人】
・2008年度以前の福祉系高校入学者で旧カリキュラムでの卒業者のうち、「介護技術講習」を修了していない人
・特例高校等の2009年度以降入学者で介護等の実務経験が9ヵ月以上ある人のうち、「介護技術講習」を修了していない人
・経済連携協定(EPA)ルートで「介護技術講習」または「介護福祉士実務者研修」を修了していない人



2023年度(第36回)介護福祉士国家試験の概要

2023年度(第36回)介護福祉士国家試験の概要や申し込みについての詳細は下記のとおりです。

◆2023年度(第36回試験)

◎試験日程

【筆記試験】2024年1月28日(日)
【実技試験】2024年3月3日(日)

◎申込期間

2023年8月9日(水)から9月8日(金)

◎試験地

【筆記試験】(35試験地)
北海道、青森県、岩手県、宮城県、秋田県、福島県、群馬県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、新潟県、石川県、長野県、岐阜県、静岡県、愛知県、京都府、大阪府、兵庫県、和歌山県、鳥取県、島根県、岡山県、広島県、香川県、愛媛県、高知県、福岡県、長崎県、熊本県、大分県、宮崎県、鹿児島県、沖縄県

【実技試験】(2試験地)
東京都、大阪府

◎試験科目

【筆記試験】(13科目)
1.人間の尊厳と自立
2.人間関係とコミュニケーション
3.社会の理解
4.介護の基本
5.コミュニケーション技術
6.生活支援技術
7.介護過程
8.こころとからだのしくみ
9.発達と老化の理解
10.認知症の理解
11.障害の理解
12.医療的ケア
13.総合問題

【実技試験】
介護等に関する専門的技能

◎受験手数料

18,380円

◎合格発表日

2024年3月25日(月)



筆記試験の内容(第36回)

介護福祉士国家試験の筆記試験は、五肢択一のマークシート方式で、配点は1問1点。合格基準は問題の総得点の60%程度で、かつ11科目群すべてで得点していることが要件です。

試験科目ごとの問題数は次の通りです。

人間と社会:18問
・人間の尊厳と自立
・人間関係とコミュニケーション
・社会の理解
こころとからだのしくみ:40問
・こころとからだのしくみ
・発達と老化の理解
・認知症の理解
・障害の理解
医療的ケア:5問
・医療的ケア
介護:50問
・介護の基本
・コミュニケーション技術
・生活支援技術
・介護過程
総合問題:12問
・総合問題
計125問

科目群は次の通りです。

[1]人間の尊厳と自立、介護の基本
[2]人間関係とコミュニケーション、コミュニケーション技術
[3]社会の理解
[4]生活支援技術
[5]介護過程
[6]こころとからだのしくみ
[7]発達と老化の理解
[8]認知症の理解
[9]障害の理解
[10]医療的ケア
[11]総合問題



実技試験の出題例

実技試験は、実際の介護現場で適切に介護が行えるかどうかを問う実践的な内容になっています。介護現場で想定されるシチュエーションが問題として提示され、受験者は、その状況に合った対応を制限時間5分以内で行います。
合格基準は課題の総得点の60%程度で、過去には次のような問題が出題されました。

2014年度(第27回)試験問題


【問題文】
青木かおるさん(93歳)は、下肢筋力が低下して杖を使用しています。
立ち上がりと歩行に一部介助が必要です。
今、本人は居間で横になっています。青木さんは「窓の近くにある植木に水をやりたい」と言っています。
青木さんが窓の近くまで移動して、いすに座るまでの介護をしてください。
青木さんは右利きです。
青木さんの返事は、「はい」または、うなずくだけです。

こうした実技試験では、受験者の対応が、介護の3原則である「安全・安楽」「個人の尊厳」「自立支援」を満たしているか、介護に従事する者として、以下のような基本的な項目に配慮できているかを確認されます。

・利用者への挨拶ができているか
・利用者とのコミュニケーションはできているか
・利用者の健康状態を把握できているか
・利用者に事前の説明と承諾を得られているか
・利用者の自己決定を促す声かけができているか
・利用者の身だしなみの確認などができているか
・環境整備は適切であるか
・利用者の残存機能を活用できているか
・「車いすの操作」「体位変換」「移乗」などの介助は適切か
・利用者の安全の確保ができているか


介護福祉士とは

ここまで、「介護福祉士国家試験」の概要や受験資格について説明してきましたが、ここで改めて、介護福祉士とはどのような資格で、どのような役割を担うのかをおさらいします。

cl038_02.jpg

介護福祉士とは、どんな資格?

介護福祉士は、介護についての高い知識・技術を習得していることを認定する国家資格です。介護系では唯一の国家資格で、取得すれば、高齢者や障がいのある人の介助・支援を行う介護のスペシャリストの証となり、介護職員として介護現場で活躍するだけでなく、現場スタッフへの教育・指導や、訪問介護のサービス提供責任者として働くことも可能です。介護分野での責任ある立場や管理職としての活躍が期待され、また、就職時・転職時の待遇面でも有利になります。
このため、介護職に就く人の多くが、はじめに入門資格である介護職員初任者研修を修了し、次に介護福祉士実務者研修の修了を経て、介護福祉士を目指すキャリアパスを描くのが一般的だとされています。


介護福祉士の職場は?

主な職場としては、訪問介護の場合はお客様のご自宅が職場となり、デイサービス(通所介護)、介護付有料老人ホーム、グループホームなどの場合は、お客様にサービスを提供する施設で働きます。

訪問介護

訪問介護では、お客様のご自宅を訪問し、入浴や排泄、食事などの介護、また日常生活上の介助、掃除、洗濯、通院などのための乗車・降車の介助などのサービスを提供します。介護福祉士有資格者には、管理者やサービス提供責任者など、訪問介護事業所をまとめる役割が求められるでしょう。

デイサービス(通所介護)

デイサービスでは、要介護状態のお客様が可能な限りご自宅で日常生活を送れるよう、そのために必要な日常生活上の介助・機能訓練などをデイサービスセンター(通所介護事業所)にて提供します。

介護付有料老人ホーム

介護付有料老人ホームは、都道府県の指定(認可)を受けた有料老人ホームのことで、24時間介護スタッフが常駐して、身体介助などの介護サービスを提供します。

グループホーム

要支援2以上の認知症高齢者に特化した小規模の居住系介護施設で、入居者は5〜9人を一つのユニットとして共同生活を行います。介護職員は、入居者が自立的に食事・清掃・入浴などが行えるようにサポートします。


介護福祉士を目指す方へ

介護福祉士は介護分野で唯一の国家資格であり、取得すれば、介護のスペシャリストとして多方面で活躍できます。介護のお仕事に携わる方なら、自身のキャリアアップのためにも、ぜひ介護福祉士国家試験の受験を検討してみてください。また、最短で介護福祉士国家試験を突破するためには、的確な試験対策が重要です。介護福祉士を目指すことを決めたら、試験対策講座の受講も併せて検討されることをおすすめします。

cl038_03.jpg


[初回公開日 2020年01月30日]

PAGE TOP