2022年04月08日

介護士になるには、どんな方法がある?

介護のお仕事に興味があるけれど、どうすれば介護士になれるのか、わからないという方もいるでしょう。また、介護士になることで、将来どのようなキャリアを形成できるのかも、気になるところです。
この記事では、これから介護士を目指す方のために、介護士になるための道筋を説明します。併せて、介護士として将来にわたって長く働き、ステップアップするためには欠かせない、介護関連の資格についても紹介します。

介護士とは?

介護士とは、日常生活を送るうえでサポートを必要とする人(介護サービス利用者)に対して、「身体介護」や「生活援助」といった介護サービスを行う人のことを指します。ただし、「介護士」という資格があるわけではありません。「介護職員」や「介護スタッフ」などの呼び方と同様、介護士は、介護事業所で介護業務に従事する人を指す総称だと考えればよいでしょう。なお、介護従事者を総称する表現としては「介護職」が適切だとされていますが、本記事では「介護士」を用いて説明いたします。

似たような名称として、「介護福祉士」がありますが、「介護士」と「介護福祉士」には、明確な違いがあります。「介護福祉士」とは、介護福祉士国家試験に合格した人のみを指す呼び方であるのに対し、介護士は、より広く、介護のお仕事に就く専門職の総称として使われています。
介護業務に従事している専門職を指す呼び方なので、介護事業所で働いている人であっても、事務職など介護以外の業務に就いているスタッフは、介護士には含まれません。

介護士の仕事内容

介護士のお仕事には、大きく「身体介護」と「生活援助」があります。

「身体介護」とは、食事や着替え、入浴、排せつなどの介助といった、介護サービス利用者の身体に触れる介護業務を指します。

「生活援助」とは、介護サービス利用者に提供する食事の準備・片づけや、居室の掃除など、介護サービス利用者の身体に触れずに行う、日常生活のサポートを指します。

[興味がある方は、こちらもご覧ください]
介護職員(介護スタッフ)のお仕事

介護士の雇用形態

それぞれの介護事業者によって、介護士の雇用形態はさまざまです。正社員(職員)として働く介護士もいれば、契約社員や派遣社員、パート・アルバイトとして雇用され、働いている介護士もいます。

介護士になるには、どんな方法がある?

介護士として働くためには、介護関連の資格を取得してから就職する方法と、資格を持たずに介護事業所の職員として就職する方法の、2通りがあります。

資格を取得してから、介護事業所の職員として就職する

介護のお仕事に関連する資格を取得してから、有資格者として、介護事業所の職員になる方法です。就職後すぐに、専門知識や技術を持った介護士として働けることが、大きな利点だと言えるでしょう。
資格を取得するためには、資格スクールなどを利用して、定められた研修を受講・修了するのが一般的です。この場合、資格取得という具体的な目標を持ち、必要な学びに集中的に取り組めることも、利点の1つだと言えます。

では、具体的に、どのような資格を取得すればよいのでしょうか。
さまざまな介護関連の資格がありますが、介護業務未経験者が最初に取得を目指すなら、入門的な資格とされている「介護職員初任者研修」が適しているでしょう。取得までに要する期間は、例えばニチイの「介護職員初任者研修」の場合、受講期間の目安を約4ヵ月としています。

なお、専門学校や4年制大学など、福祉系の学部学科やカリキュラムを設置している学校に入学して、「介護職員初任者研修」などの資格を取得する方法もあります。「介護職員初任者研修」を取得するための方法、学習内容、試験の実施方法などについては、「介護士が取得すべき資格とは?」で、詳しくご説明します。

資格を持たずに、介護事業所の職員として就職する

介護士になるための、もう1つの方法として、資格を取得する前に、介護事業所の職員として就職し、そこから資格を取得して介護士を目指す方法もあります。

介護事業者の求人案件のなかには、「未経験可」、あるいは「無資格可」としているものもあります。これらの求人は、有資格者が行う介護サービスのサポートや、事業所の事務作業など、資格を必要としない業務を行うスタッフを募集するものです。そこで、これらの求人に応募し、職員として就職したうえで、「介護職員初任者研修」などの資格取得を目指します。

この方法は、すぐに収入が必要な人にとっては、働いて収入を得ながら、介護士になるために必要な資格取得を目指せるのが、大きな利点だと言えます。また、介護事業所で働くことで、机上の学びだけでは得ることが難しい「生きた知識」を身につけられる可能性もあります。

学ぶための手段としては、資格を取得してから就職する場合と同様に、資格スクールなどを利用するのが一般的です。その際、介護事業者によっては、従業員が資格を取得するのに必要な受講費用をサポートする制度を設けていることもあります。また、介護サービスと資格スクールの両方を営んでいる事業者の場合、お仕事と学習を両立しやすいよう、時間調整などの面で配慮を受けられることもあるようです。求人案件を検討するときに、チェックしてみてはいかがでしょうか。

介護士が取得すべき資格とは?

介護士として介護業務を行うためには、関連する資格を取得する必要があります。その第一歩となるのが、介護士の入門的な資格とされている「介護職員初任者研修」です。将来的に、介護士としてキャリアを積み重ねていくための、スタートラインだと言えます。

介護関連資格のキャリアパス

養成校が実施する所定の研修カリキュラムを受講し、修了試験に合格することで、「介護職員初任者研修」の資格を得られ、介護士として食事や着替え、入浴、排せつの介助といった「身体介護」の業務ができるようになるのです。

介護職員初任者研修で学ぶ内容とカリキュラム

「介護職員初任者研修」では、高齢者や障がいのある人の生活、自立をサポートするために必要な知識と技術を学びます。
研修は、各都道府県から指定を受けた養成校が実施します。カリキュラムは厚生労働省の指針に基づいて定められ、通学94時間(16日間)と、自宅学習36時間程度を合わせた、合計約130時間の学習を、1.5ヵ月~4ヵ月程度で修了する内容となっています。

具体的な学習内容は、次のとおりです。

介護職員初任者研修で学ぶ項目
研修項目 内容 時間数
職務の理解 介護の職種やサービス・施設など、職務内容について 6時間
介護における尊厳の保持・自立支援 介護にあたって大切にすべき、人の尊厳や権利、介護サービス利用者の能力に応じた自立支援など、基本的な理念 9時間
介護の基本 介護で求められる専門性や職業倫理、他の職種との連携、事故や感染などのリスクマネジメントなど、実際の仕事で押さえておくべき基本 6時間
介護・福祉サービスの理解と医療との連携 「介護保険制度」や「障害者総合支援制度」など、介護に欠かせない制度やサービスの理念や仕組み。医療・リハビリテーションなどとの連携 9時間
介護におけるコミュニケーション技術 介護サービス利用者やその家族との信頼関係を築くコミュニケーションや、職員同士の情報共有など、コミュニケーションの重要性や考慮すべきポイントなど 6時間
老化の理解 加齢による身体や心の変化、疾病による症状や訴えなど、日常生活への影響 6時間
認知症の理解 認知症とはどのようなものなのか、基礎知識や健康管理、心身や生活にもたらされる変化、必要なケアなど 6時間
障害の理解 障害福祉の基礎知識や、心理・行動の特徴、本人や家族への支援など 3時間
こころとからだのしくみと生活支援技術 介護技術の根拠となる人体構造や機能、安全な介護サービス提供方法などの基礎と、現場で必要とされる「車いすの介助」「入浴介助」「着脱介助」「体位変換」などの実技演習 75時間
振り返り 研修全体を振り返り、重要なポイントや疑問を改めて確認 4時間

介護職員初任者研修の修了試験

上の表にあるカリキュラムをすべて学び終えると、修了試験として、1時間程度の筆記試験が行われます。出題内容は、研修を実施する養成校ごとに異なりますが、100点満点のうち70点以上を取れば、合格です。不合格の場合も、追試験を受けることができます。
この修了試験に合格することで、「介護職員初任者研修」の資格を取得できます。

介護職員初任者研修の受講に必要な費用

「介護職員初任者研修」の受講には、どれぐらいの費用がかかるのでしょうか。
地域や養成校によって違いがありますが、目安として、50,000~100,000円前後と見積もっておけば大丈夫でしょう。一括払いのほか、分割払いに対応している養成校もあります。
介護事業と養成校の両方を営んでいる事業者のなかには、資格の取得後、「系列の介護サービス事業所の職員として就職すること」を条件に、受講費用のキャッシュバックが受けられる制度を設けているところもあります。

介護職員初任者研修の講座を選ぶ際のポイント

「介護職員初任者研修」で受講する項目や時間数は、どの養成校も共通です。しかし、クラスの設定は、それぞれの養成校ごとに異なります。例えば、受講期間は短いクラスで約1ヵ月、長いクラスでは約4ヵ月と幅があります。また開講曜日も、平日か土・日かを選べたり、1週間の受講回数を選択できたりする養成校もあります。選択肢の多い養成校のほうが、ご自身の都合に合わせて無理なく学べる可能性が高いと言えます。

介護職員初任者研修の取得後、さらに目指したい資格

介護関連資格のキャリアパス

介護福祉士実務者研修
「介護職員初任者研修」の上位資格として位置づけられ、さらに専門的な知識や技術が求められる資格です。所定の研修を受講・修了し、この資格を取得することで、「身体介護」に加えて、訪問介護の計画立案、実施、管理などを行う「サービス提供責任者」を務めることができます。

介護福祉士
介護のお仕事に関連する唯一の国家資格です。介護福祉士国家試験に合格し、所定の手続きを経ることで、介護福祉士の名称を名乗ることができます。また、介護事業所によっては、介護福祉士になることで、他の介護士を束ねるリーダーなどの職に就ける場合もあります。

ケアマネジャー(介護支援専門員)
「介護福祉士」の資格取得後に、さらに活躍の場を広げるための資格の1つです。各都道府県が実施する試験に合格し、ケアマネジャー資格を取得することで、介護保険サービスに必要なケアプランの作成や、介護施設入所者の介護計画立案といった業務を行うことができます。

社会福祉士
「ケアマネジャー」と同様に、「社会福祉士」も「介護福祉士」の資格取得後に目指したい資格の1つです。社会福祉士国家試験に合格して「社会福祉士」になると、ソーシャルワーカーとして、日常生活に困難を抱えている人々の支援を行えるようになります。

資格を取得することで、介護士としての未来が広がる

ここまでお読みいただいたように、介護士になることと、資格を取得することは、切っても切れない関係にあります。無資格、未経験でも、介護の業界で働き始めることはできますが、介護士として、介護のお仕事をするためには、介護関連の資格取得は必須です。

資格があれば、対応できる業務の領域も、大きく広がるでしょう。介護士としてキャリアを積み上げることを目指すのであれば、資格を取得し、着実にステップアップされることをおすすめします。


[初回公開日 2021年12月16日]

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