2022年12月06日

ホームヘルパー2級(訪問介護員2級)とはどんな資格?介護職員初任者研修との違いは?

介護業務の現場では、「ホームヘルパー2級」という資格名を見聞きすることがあります。ところが、「ホームヘルパー2級」の資格を新たに取得するといった話を聞くことはないはずです。実は「ホームヘルパー2級」はすでに廃止されていて、「ホームヘルパー2級」に代わる位置付けの資格として、「介護職員初任者研修」という公的資格が設けられたのです。この記事では、「ホームヘルパー2級」が「介護職員初任者研修」に移行した理由や経緯のほか、2つの資格の違いについて説明します。また、「ホームヘルパー2級」の資格を取得している方が、知っておきたいポイントも解説します。

ホームヘルパー2級とは?

「ホームヘルパー2級」は、ホームヘルパー(訪問介護員)に必要な知識や技術を習得したことを証明する公的な認定資格です。「ホームヘルパー2級」は通称で、正式には「訪問介護員2級養成研修課程」という名称ですが、この記事では一般によく知られている「ホームヘルパー2級」の通称で説明します。
「ホームヘルパー2級」は、介護業務に関わる公的な資格の1つとして位置付けられていましたが、2013年4月1日の「介護保険法施行規則」改正を機に、「介護職員初任者研修」に移行されました。
移行により、新たに「ホームヘルパー2級」の資格を取得することはできなくなりましたが、それ以前に取得した「ホームヘルパー2級」の資格は、引き続き有効だとされています。
そして現在、「ホームヘルパー2級」と同等の資格として位置付けられているのが、「介護職員初任者研修」です。

「ホームヘルパー2級」と「介護職員初任者研修」の違い

「介護職員初任者研修」は、以前の「ホームヘルパー2級」と同等の知識や技術を習得していることを証明する資格として新設されました。しかし、この2つの資格には異なる点もあります。新旧の資格の違いを見ていきましょう。

学習の目的

「ホームヘルパー2級」の養成研修では、「訪問介護員に必要な知識・技術を身につける」ことを目的としていました。一方、「介護職員初任者研修」では、「在宅・施設を問わず、介護職員として働くうえで必要な知識・技術を身につける」ことを目的としています。
「ホームヘルパー2級」の資格は、訪問介護の従事者を対象としていたのに対して、「介護職員初任者研修」の資格は、訪問介護だけではなく、施設での介護業務にも対応できる介護従事者の育成を目的としていることが読み取れます。

学習する科目数

「ホームヘルパー2級」の養成研修に対し、「介護職員初任者研修」では、学習する科目数が1科目増えています。新たな学習科目として追加されたのは、「認知症の理解」です。

実習や演習の形態

「ホームヘルパー2級」の養成研修では、座学のほかに、"介護業務を行っている施設で30時間の実習を行う"必要がありました。「介護職員初任者研修」では、この施設実習は課せられていません(都道府県によって異なります)。一方で、「こころとからだのしくみと生活支援技術」など、一部科目の学習時間が増えました。また、研修を受講するスクールでの実技講習時間が増えています。トータルの学習時間は、どちらも130時間で変わっていません。

修了試験の有無

「ホームヘルパー2級」は、定められた養成研修のカリキュラムを修了すれば、資格を取得できました。「介護職員初任者研修」は、カリキュラムを修了するだけではなく、修了試験(筆記)に合格する必要があります。もっとも、この修了試験は学んだ内容を理解しているかどうかを確認するためのもので、研修をしっかり受講していれば問題ないでしょう。

「ホームヘルパー2級」と「介護職員初任者研修」の主な相違点

訪問介護員養成研修2級課程
(ホームヘルパー2級講座)
介護職員初任者研修
学習の目的 「訪問介護員」を養成するための知識と技術を学ぶ。 在宅・施設を問わず「介護職員」を養成するための知識と技術を学ぶ。
学習内容 実技実習のほか、実際の介護現場で行う施設実習あり。 実技実習のみで、施設実習はなし(都道府県によって異なる)。
「こころとからだのしくみ」「生活支援技術」の学習が増え、認知症についても学ぶ、より実践的なカリキュラム。
学習科目 「職務の理解」「介護における尊厳保持と自立支援」「介護の基本」「介護・福祉サービスの理解と医療との連携」「介護におけるコミュニケーション技術」「老化の理解」「障害の理解」「こころとからだのしくみと生活支援技術」「振り返り」 左記科目のほか、新たに「認知症の理解」を追加。
学習時間 研修時間:130時間
うち実技実習時間:42時間
  施設実習時間:30時間
研修時間:130時間
うち実技実習時間:90時間
修了試験 なし あり
  • ※都道府県によって、異なる場合があります。

「ホームヘルパー2級」が「介護職員初任者研修」に移行した背景

ところで、なぜ「ホームヘルパー2級」から、「介護職員初任者研修」に移行したのでしょうか。その大きな理由としては、介護業務における「キャリアパスの明確化」があります。

旧制度では、「ホームヘルパー2級」のほかにも、介護業務に関する公的資格がいくつもあり、複雑でした。介護関連の資格を取得してステップアップしようと考えたときに、「どの資格を取得すればよいのか」を、自分で見極める必要があったのです。複数の資格取得を目指すと、それぞれ内容が重複していて、同じ内容を別々に学び直さなければならないという不便もありました。さらに、介護関連では唯一の国家資格である「介護福祉士」の国家試験を受験するときにも、受験資格を得るための要件が複数の資格体系に対応していたために、受験者にとっては煩雑でわかりにくい状態でした。


このような状態を解消し、ステップアップの道筋を明確にして、優秀な介護人材をより多く育成することを目的に、キャリアパスの一本化が行われました。それまであった複数の資格体系が集約されて、「介護職員初任者研修」→「介護福祉士実務者研修」→「介護福祉士」という、現在のキャリアパス(図)ができたのです。

なお、旧制度では、「ホームヘルパー2級」のほかにも、上位資格である「ホームヘルパー1級」や、より入門的な位置付けの「ホームヘルパー3級」がありましたが、2013年4月の制度改正で、現行の制度に一本化されています。

「ホームヘルパー2級」から「介護職員初任者研修」への移行による影響

介護業務の現場では今日でも、「ホームヘルパー2級」資格取得者は、「介護職員初任者研修」の修了要件を満たしているとみなされます。取得している資格が異なるというだけで、担当する業務や待遇などに差がつくことは、ほぼないと言えるでしょう。

ただし、「ホームヘルパー2級」と「介護職員初任者研修」は、あくまでも"別の資格"です。資格取得までのプロセスや、学習する内容も異なります。「ホームヘルパー2級」資格を取得していても、「介護職員初任者研修」を修了していなければ、「介護職員初任者研修」の資格取得者を名乗ることはできません。"だいたい同じぐらいのレベルなのだから、「介護職員初任者研修」だということにしておこう"...は認められませんので、ご注意ください。

「ホームヘルパー2級」は履歴書に書けるか?

以前に取得した「ホームヘルパー2級」の資格は、今でも有効で、履歴書に書いても問題ありません。「ホームヘルパー2級」の修了者は、「介護職員初任者研修」の修了要件を満たしているとみなされ、資格の効力は「介護職員初任者研修」とほぼ変わらないと考えてよいでしょう。

ただし、実質的にほぼ同等と言っても、「ホームヘルパー2級」資格を「介護職員初任者研修」として記載することはできません。
なお、履歴書に書く場合は、通称の「ホームヘルパー2級」ではなく、正式名称の「訪問介護員2級養成研修課程」と記載します。

介護職員初任者研修の取得方法

現在、介護関連の資格を持っていない人が、新たに介護職員になるためには、「介護職員初任者研修」の資格を取得するのが一般的です。

「介護職員初任者研修」資格は、各都道府県から指定を受けた養成校で、厚生労働省が定めるカリキュラムを修了した後、修了試験(筆記)に合格することで取得できます。詳しくはこちらをご覧ください。 筆記試験があるため、「合格できるだろうか?」と不安に思われる方もいるかもしれません。しかし、「介護職員初任者研修」の修了試験は、あくまでも講義の理解度を確かめるためのもので、しっかりと受講していれば十分合格できるレベルだと言われています。ぜひ挑戦してみてはいかがでしょうか。

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