2022年01月05日

医療事務と医療秘書ってどう違うの?

医療事務と名前が似ているお仕事に、医療秘書があります。医療事務と医療秘書では、何が、どのように違うのでしょうか。
この記事では、医療事務と医療秘書について、お仕事の内容や関連する資格、気になる年収などを紹介します。医療を支えるお仕事に就きたいと考えている人は、ぜひご一読ください。

医療事務とは?医療秘書とは?

医療事務も、医療秘書も、病院やクリニックなどの医療機関において、主に事務的な業務を行います。医療事務や医療秘書が事務的な業務を担うことで、医師や看護師などの医療従事者は、自分の仕事である医療に専念することができるのです。医療を支える職種の1つであり、医療機関や患者様にとって、意義のある存在だと言えます。

医療事務とは?

医療事務は、医療機関で行われる事務のお仕事を指します。

主なお仕事としては、医療機関が健康保険組合などの保険者に医療費を請求するために、診療や治療の内容、使用した薬剤などを記載した明細書を作成するレセプト業務があります。また、医療機関を訪れた患者様に応対する受付業務や、会計業務なども、主要な業務の1つです。このように、一般的な事務職と比べると、医療機関特有の業務が多く、事務系のお仕事のなかでは専門性が高いと言えるでしょう。

また、医療事務のお仕事の1つに、「医師事務作業補助」があります。医師の指示の下で、診断書などの文書作成を行ったり、電子カルテ入力の代行、診察で得られたデータの整理・管理といった事務作業を通じて、医師をサポートするお仕事です。医師事務作業補助に従事するスタッフは、医師事務作業補助者(またはドクターズクラーク®)と呼ばれ、医療事務の資格に加えて、医療事務作業補助の資格を取得することで、活躍の場を広げる医療事務スタッフも多くいます。医師事務作業補助者(ドクターズクラーク®)については、こちらの記事もご参照ください。

医療秘書とは?

医療秘書は、院長など病院の役職者や医師をサポートする秘書業務や、情報管理などを中心としたお仕事を指します。

サポートする対象のスケジュール管理、来客応対といった秘書業務に加え、医療に関する文書の管理など、勤務する医療機関内でほかのスタッフと連携する業務が、比較的多いのが特徴だと言えます。また、経験を積むことで、医師が学会へ出席する際に同行したり、ときには研究論文の作成をサポートすることもあるなど、一般的な秘書職以上に高い専門性が求められることもあるようです。

医療事務と医療秘書の違い

医療事務と医療秘書には、共通点もありますが、「主に誰と接するお仕事か」という点で、違いがあります。医療事務が担当するのは、受付や患者様への応対、会計、レセプト業務などです。患者様と接する機会が多く、またレセプト業務では保険者からの問い合わせへの対応なども少なくないことから、どちらかと言えば医療従事者以外の人と接する機会が多いお仕事だと言えます。

ただし、医師事務作業補助者として勤務する医療事務スタッフの場合は、診察室に入り、診察を行う医師の近くで直接医師をサポートするお仕事が中心になりますので、医療従事者と接する機会や医療現場そのものに携わる機会が多いお仕事とも言えます。

医療秘書は、院長など役職者や医師の秘書業務を行ったり、書類やデータを管理したりと、医療従事者やスタッフを医療機関内でサポートするお仕事が中心になります。

なお、大規模な病院などでは、医療事務(医師事務作業補助者を含む)と、医療秘書はそれぞれ分業されていることが多いようですが、クリニックなど規模の小さな医療機関では、同じスタッフが各業務にあたることもあります。

医療事務・医療秘書に役立つ資格

医療事務にも、医療秘書にも、それぞれの業務に関連した資格が複数あります。
どちらも、資格を取得しなければ働くことができないというものではありません。しかし、資格があれば、業務に必要な知識やスキルを持っていることの証となります。これから医療事務や医療秘書のお仕事を目指すのであれば、資格取得に挑戦してはいかがでしょうか。

いずれの資格も、それぞれ行われている資格試験を受験して合格することで取得できます。代表的な資格には、次のようなものがあります。

医療事務の主な資格

メディカル クラーク®
「メディカル クラーク®」とは、一般財団法人 日本医療教育財団が実施する「医療事務技能審査試験」の合格者に与えられる称号です。1974年の創設と、医療事務に関連する資格のなかでも、長い伝統があります。「メディカル クラーク®」は、診療報酬明細書(レセプト)作成の知識・技能や、患者応対の技能などが備わっていることを証明する資格となっています。

医療事務管理士®
株式会社技能認定振興協会(JSMA)が認定する医療事務の資格が、「医療事務管理士®」です。診療報酬請求の知識や技能を証明するものと位置づけられ、医療事務管理士®技能認定試験に合格することで、「医療事務管理士®」の称号が与えられます。

医療事務認定実務者®
特定非営利活動法人 全国医療福祉教育協会が認定する医療事務の資格が、「医療事務認定実務者®」です。技能を判定するための試験では、医療事務に関する基礎知識が問われるほか、クリニックの外来症例を想定したレセプト作成の実技問題が出題されます。合格すると、「医療事務認定実務者®」の称号が与えられます。

ドクターズクラーク®
一般財団法人 日本医療教育財団と公益社団法人 日本病院協会が認定する、医療事務および医師事務作業補助者に必要な専門知識・スキルを証明する資格が「ドクターズクラーク®」です。試験の認定委員会が認定規程により定める「教育訓練ガイドライン」に適合すると認める教育訓練講座を修了するか、または医師事務作業補助者として6ヵ月以上の実務経験を積んだうえで、「医師事務作業補助技能認定試験」に合格すると、「ドクターズクラーク®」の称号が与えられます。

医療秘書の主な資格

医療秘書技能検定
一般社団法人 医療秘書教育全国協議会による、医療秘書としての専門知識と技能を認定するのが、「医療秘書技能検定」です。3級、2級、準1級、1級と、4つの級が設定されていて、1級が最上級となっています。各級の検定試験では、医療秘書の実務に関する知識に加えて、医療事務の基礎知識や、医療の基礎知識も加えた3領域の知識・技能について、習得レベルが判定されます。

日本医師会認定医療秘書
公益社団法人 日本医師会が認定する、医療秘書の資格です。資格を取得することで、基礎的な医学の知識や、秘書業務・情報処理の知識、ビジネスマナーなどを備えた医療秘書であることの証となります。日本医師会が認定する養成機関で所定のカリキュラムを受講・修了した後、日本医師会医療秘書認定試験に合格し、さらに秘書技能科目(秘書検定、情報処理、保険請求事務など)の資格を取得することで、「日本医師会認定医療秘書」の資格を得られます。

医療事務や医療秘書の、資格試験の内容は?

では、医療事務や医療秘書の資格を取得するための試験は、どのように行われ、どのような問題が出題されるのでしょうか。医療事務と医療秘書のそれぞれについて、一例を紹介します。

医療事務の資格試験(例)-医療事務技能審査試験(メディカル クラーク®)

  • 試験で問われること:医療機関などにおける受付業務や、診療報酬請求事務業務(レセプト業務)に関する職業能力
  • 受験資格:特になし
  • 試験の実施回数:毎月実施(年12回) ※医科の場合
  • 試験の実施方法:在宅受験(郵送された試験問題に回答して返送)
  • 受験料:7,700円(税込)
  • 2021年12月現在の情報です。

医療秘書の資格試験(例)-医療秘書技能検定 3級

  • 試験で問われること:医療秘書として、医療秘書実務や医療関連法規などの領域について基礎的知識と技能を持ち、一般的な業務を遂行できること。
  • 受験資格:特になし
  • 試験の実施回数:年2回
  • 試験の実施方法:会場受験(指定の会場に出向いて受験)
  • 受験料:4,000円(税込) ※受験級によって異なる
  • 2021年12月現在の情報です。

医療事務・医療秘書の資格は、独学でも取得できる?

医療事務や医療秘書の資格は、世の中に数多くある他の資格と比較すると、難関資格というわけではありません。とは言え、試験に合格して資格を取得するためには、やはり相応の準備が必要です。独学で受験対策を進める人もいますが、合格に必要な知識や技能を効率的に習得するためには、教育講座や専門学校などの利用をおすすめします。

その理由の1つとして、受験対策に必要な時間を確保するのが、独学だと大変だということがあります。具体的に、どのくらいの時間を学習に割く必要があるのでしょうか。1つの目安として、例えばニチイの医療事務講座では、通学コースの総学習時間を52.5時間と設定しています(通信コースの場合は、受講期間約3ヵ月)。日常生活のなかで、これだけの時間を資格試験のための学習に割くのは、不可能とは言えないまでも、かなり困難ではないでしょうか。

その点、学習環境の整ったなかで集中して学べる通学コースや、空いた時間も活用して効率よく学習を進められる通信コースを利用すれば、無理なく、効率的に合格を目指しやすいと言えます。

なお、医師事務作業補助の認定資格である「ドクターズクラーク®」は、認定団体により指定された教育訓練講座の修了(または医師事務作業補助の実務経験)が受験資格を得るための条件となっているため、未経験者が独学で取得することはできません。

[興味がある方は、こちらもご覧ください]
ニチイの医療事務講座(医科)
ニチイのメディカルドクターズクラーク講座

医療事務も医療秘書も、自分のスキルを社会に役立てられるお仕事

医療事務も、医療秘書も、それぞれの業務内容に違いはあるものの、どちらも間接的に医療に貢献できるお仕事だという点では共通しています。

ほかの業界と比べて、医療業界は需要が比較的安定しており、景気や社会の変化に左右されることが少ないのも、魅力の1つです。医療事務も、医療秘書も、お仕事に就いてスキルを磨けば、将来にわたって安定的に働けることも十分に期待できます。

また、医療事務であれば、ひと通りのお仕事を身につけたうえで、医師事務作業補助者としてさらに活躍の場を広げる道もあります。医師事務作業補助のお仕事を通じて、診察の現場に近いところで医療の一端を支えているのだという、さらに大きなやりがいを得られることでしょう。医療に関わるお仕事を通じて、社会の役に立つことができる医療事務や医療秘書、さらには医師事務作業補助に、チャレンジしてみてはいかがでしょうか。

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