2024年03月21日

医師事務作業補助者(ドクターズクラーク®など)のお仕事

医師事務作業補助者(ドクターズクラーク®など)とは

医師事務作業補助者とは、医師の指示のもと、診断書などの文書作成代行や電子カルテの入力代行など、医師の事務作業を補助することで診療のサポートを行うお仕事です。
受付やレセプト点検などを行う医療事務(メディカル クラーク®)とは異なり、診察室に入り、医師と直接コミュニケーションを取りながら文書などを作成するので、より医療現場に近いお仕事だと言えます。医療に興味があり、診療の現場の最前線で人の役に立ってみたいと考えている方に特におすすめのお仕事です。医師事務作業補助者には、関連する民間の資格がいくつかあり、代表的なものに、(一財)日本医療教育財団と(公社)全日本病院協会の認定試験合格者に付与される「ドクターズクラーク®」などがあります。

2008年度に、病院勤務医の事務作業負担を軽減し、医療の質を高めることを目的として、診療報酬に「医師事務作業補助体制加算」が新設され、医師事務作業補助者のいる病院では、一定の条件を満たしている場合、診療報酬に加算ができるようになりました。医療の質の向上に加え、医師の働き方改革の観点からも、医師の事務作業負担の軽減は早急に解決すべき課題となっており、医師事務作業補助者を配置する病院は年々増加しています。

  • 診療の現場の最前線で、人の役に立つことができる
  • 医師の事務作業を代行することのやりがいを感じられる
  • 専門的な知識やスキルを身につけることができる
  • 職場となる大規模な病院では受付終了時間が早いことも多く、プライベートの時間を確保しやすい

医師事務作業補助者(ドクターズクラーク®など)の職場

医師事務作業補助者(ドクターズクラーク®など)は主に総合病院など、大規模な医療機関で多く活躍しています。

総合病院、大学病院などの大規模な医療機関

医師事務作業補助者(ドクターズクラーク®など)は、医師事務作業補助者の配置が評価対象となる大規模な医療機関を中心に活躍しています。勤務中は主に診察室で診療中の医師につき、電子カルテの入力代行や、診療データの管理・整理などを行います。

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医師事務作業補助者(ドクターズクラーク®など)の具体的な業務内容

医師事務作業補助者(ドクターズクラーク®など)の業務には、診断書などの文書の作成代行、電子カルテの入力代行、診療に関するデータ整理・管理などがあります。これまで医師が担っていた事務作業を代行することで、医師が診療に専念できる環境づくりを行い、「医療の質の向上」に貢献することが業務の柱となります。

診断書などの文書作成代行

医師の指示のもと、診断書や処方せんの作成などを行います。診断書や処方せんは、患者の治療に関する重要な文書なので、責任を持ってミスのないように作成する必要があります。

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◆医師事務作業補助者が作成代行を行う主な文書

・病院様式の診断書
・保険会社様式の診断書
・身障者・労災などの行政様式の診断書
・介護保険における医師の意見書
・患者・家族への説明文書
・診療情報提供書(紹介状)
・紹介状の返書
・入院診療計画書
・退院サマリー
・診療報酬明細書(レセプト)に添付する症状詳記
など

電子カルテなどの入力代行

診察室で医師につき、医師の指示のもと、医師の代わりにPCを使って電子カルテの入力などを行います。検査や処方などのオーダーの入力業務や、検査結果の出力を行うこともあります。医師の事務作業を代行することのやりがいを大きく感じられる業務です。

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◆医師事務作業補助者が入力代行を行う主な文書

・外来診療録
・入院診療録
・手術記録
・麻酔記録
・内服薬の処方(処方せん・処方オーダ)
・注射薬の処方(注射せん・注射オーダ)
・検査の指示(検査伝票・検査オーダ)
・処置の指示(処置せん・処置オーダ)
など

診療に関するデータ管理・整理

診療を通して得られたデータの管理や整理も医師事務作業補助者(ドクターズクラーク®など)のお仕事です。行政が管轄する感染症のサーベイランス事業(疾病の摘発を目的として行われる検疫、調査)に関わる入力や、救急医療情報システムへの入力を行うこともあります。

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◆医師事務作業補助者がデータ管理・整理を行う主な文書

・診療録・画像検査結果
・病院運営に関する資料
・通信文(書簡・電子メールなど)
・疾患別患者数や手術件数などの集計
・院内がん登録
・臨床研修のための資料作成
・院内会議のための資料作成
・院外会議のための資料作成
・学会・研究会のための資料作成
・学術論文などの資料の検索・取り寄せ
・救急医療情報システムへの入力
・感染症サーベイランス事業に係る入力
・ヒヤリ・ハット事例収集事業に係る入力
など

医師事務作業補助者(ドクターズクラーク®など)の雇用形態・勤務時間

医師事務作業補助者(ドクターズクラーク®など)には、正社員だけでなく、さまざまな雇用形態があります。医師事務作業補助者の配置が評価対象となる医療機関は大規模な病院が多く、クリニックなど小規模な医療機関より受付終了時間が早いことも多いため、家事や育児と仕事を両立したい方や、プライベートな時間の確保を重視する方にとっても働きやすいお仕事だと言えます。
一般的には、医療事務の資格を取得したうえで医師事務作業補助者の資格を取得し、医療事務からのステップアップとして医師事務作業補助者(ドクターズクラーク®など)のお仕事をしている方が多いようです。

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医師事務作業補助者(ドクターズクラーク®など)と医療事務の違い

共に医療機関で事務作業に従事する医師事務作業補助者(ドクターズクラーク®など)と医療事務には、多くの共通点がある一方で、明確な違いもあります。どのような点が異なるのでしょうか。

医師事務作業補助者(ドクターズクラーク®など)と医療事務の違い

2008年度の診療報酬改定で定められた「医師事務作業補助体制加算」では、医師事務作業補助者(ドクターズクラーク®など)の業務を、「医師の指示のもとに行う補助業務」と定めています。

医師事務作業補助者(ドクターズクラーク®など)が配置されている医療機関では、診療録や処方せんの作成補助や、医師の業務に必要な資料作成などを、医師事務作業補助者(ドクターズクラーク®など)が医師の指示のもとで行ってよいとされています。これらの業務では、医療内容に関わる患者の個人情報を扱うことがあり、業務の内容によっては比較的高度な専門知識が必要になることもあります。そのため、主に受付や窓口での応対や、診療報酬明細書(レセプト)に関わる業務を行う医療事務とは明確に区別されています。

なお、医師事務作業補助体制加算を算定しない病院では、医師事務作業補助者(ドクターズクラーク®など)と医療事務の業務を兼務することが可能です。

医師事務作業補助者(ドクターズクラーク®)に求められるスキル

医師に代わって多くの文書を作成する医師事務作業補助者(ドクターズクラーク®など)には、医療事務と同様に、一つひとつの業務を正確に遂行できる集中力や注意力が不可欠です。そのうえで、診療科目や医療内容ごとに、その分野の基礎的な知識が求められたり、業務内で専門用語を扱う場面も少なくありません。例えば、わからない用語が出てきたときに、医師や周囲の医療スタッフに質問したり、自分で調べるなどして、わからないまま放置せずに理解しようとする向上心も求められるでしょう。
また、医療機関における業務の多くは、医師や他のスタッフとのチームプレーだと言えますので、協調性やコミュニケーション能力も不可欠です。

医師事務作業補助者になるには

医師事務作業補助者の求人にあたり、無資格・未経験でも可としている医療機関もあるようです。しかし、関連する資格を事前に取得しておけば、応募の際にアピールできたり、採用後も自信をもって業務にあたることができるでしょう。さらに、取得した資格によっては「ドクターズクラーク®」などの称号を名乗ることもできます。

32時間の研修と6ヵ月の職場研修を受講

医療機関で医師事務作業補助者として働くためには、厚生労働省が指定する32時間以上の研修を受講し、かつ6ヵ月間の職場研修が必要とされています。ただし、これらは採用後に受講することもできます。そのため、応募に際して資格・経験を問わないとしている求人案件もあるようです。

資格を取得すれば就業後も役立つ

医師事務作業補助者として働くために、必須となる国家資格などはありませんが、関連する民間資格は、ドクターズクラーク®を始め、いくつかあります。「医師事務作業補助者になる」という明確な目標があれば、これらの資格を事前に取得しておけば、採用選考で熱意をアピールすることができます。

ドクターズクラーク®

(一財)日本医療教育財団と(公社)全日本病院協会が認定する、医師事務作業補助者の資格が「ドクターズクラーク®」です。取得するには、両団体が定めたカリキュラムの教育訓練講座の修了または、医師事務作業補助職としての6ヵ月以上の実務経験を経て、「医師事務作業補助技能認定試験」に合格する必要があります。試験は在宅試験で年6回(1・3・5・7・9・11月)行われており、学科試験と実技試験があります。合格にはそれぞれ70%以上の正答が必要です。

なお、医療事務未経験者が「ドクターズクラーク®」の資格取得を目指すのであれば、まず初めに医療事務の資格を取得したうえで、そこからステップアップする方法もあります。通学制の講座や通信教育講座などを上手に活用すれば、効率よく学ぶことができるでしょう。

今後ますます需要が高まると見られる職種

現在、多くの医療機関で、医師の負担増が課題となっています。そうした背景からも、これまで医師が行っていた事務作業の負担を軽くして、本来の診療行為に専念できるようにするため、医師事務作業補助者(ドクターズクラーク®など)の需要はますます大きくなってきています。
日々の業務のなかで必要とされる知識が多く、常に学んで情報のインプットに努める必要はありますが、医療を側面から支えることで社会の役に立ちたいと願っている人にとっては、大きなやりがいを得られる職種だと言えるでしょう。現在、医療事務として活躍されている人も、まだ未経験の方も、ぜひ医師事務作業補助者(ドクターズクラーク®など)を目指してみてはいかがでしょうか。


[初回公開日 2019年02月28日]

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