2023年11月01日

一般事務と医療事務の違いって何?仕事内容や給与、資格、就職するために必要な準備などを解説!

医療事務は、一般的な事務のお仕事と、どのように違うのでしょうか。同じ「事務」という言葉を使っていても、両者のお仕事内容には、大きく異なる点があります。また、就職に向けた準備にも、少し違う点があるようです。ここでは、医療事務と一般的な事務の違いについて、いくつかの点から解説します。これから医療事務を目指す人は、両者の違いを踏まえたうえで、就職の準備に役立ててみてはいかがでしょうか。

一般事務と医療事務の仕事内容の違い

一般事務とは、どのような業務を指すのでしょうか。業界によって取り扱う商品やサービスが異なるように、事務の領域も異なりますが、主として「パソコンでのデータ入力」「書類の作成・管理」「備品の購入・管理」「郵便物の仕分け・発送」「電話応対」など、社内の事務作業を幅広くサポートするような業務を一般事務として位置づけることが多いようです。

対して、医療事務の場合は、主に医療機関における「受付業務」「会計業務」「クラーク業務」「レセプト作成・点検業務」を指します。診療行為に関わる周辺の事務業務に範囲が絞られますが、専門的な用語が使われたり、医療事務専用のパソコンを使用したりします。そのため、従事する人に求められる専門性は、一般事務よりも高いと言えます。医療事務の主な業務としては、次のようなものがあります。

受付業務

来院した患者様から、診察券や保険証を預かり、確認します。何らかの症状を抱えて来院される方への接遇となるため、専門的な知識に基づいた対応や、細やかな気配りが求められます。

会計業務

カルテと診療報酬点数表から、患者様が加入している医療保険に基づいた金額を計算して、会計を行います。 最近では電子カルテの導入が進み、自動的に金額が算出される場合もありますが、医師の作成したカルテと見比べ、誤りがないかを確認する必要があります。十分な注意を払って、かつ、スピーディに行うことが求められます。

クラーク業務

外来診察室や入院病棟で、患者様の呼び出しや、検査準備、見舞客の案内、カルテの準備などを行います。医師や看護師の事務的な業務をフォローし、外来・入院患者様と診療部門とを結ぶ橋渡し役として、コミュニケーション能力が求められます。

レセプト作成、点検業務

レセプトとは、医療機関が健康保険組合などの保険者に医療費を請求するために、行った処置や使った薬剤を記載した明細書のことです。請求は1ヵ月ごとにまとめて行い、当月のレセプトの提出期限は翌月10日までと決まっていますので、月末と月初はレセプト業務が忙しくなります。そのため、診療報酬についての専門的知識が求められ、また、一般事務で使われるコンピュータシステムとは異なる「レセプトコンピュータ」の操作スキルも必要とされます。

一般事務と医療事務の勤務先の違い

一般事務では、勤務先は多岐にわたります。多くは民間企業となりますが、官公庁や地方自治体、教育機関や、そのほかの各種法人にも一般事務の業務はあります。

一方、医療事務の勤務先は、医療機関となり、その規模は大小さまざまです。大学病院や地域の総合病院のように大規模な病院もあれば、町の「かかりつけ医」として地域医療を支えているクリニックもあります。

比較的大規模な病院では、働いている医療事務スタッフの人数も多く、業務が細分化されていたり、役割分担が明確になっていることが多いようです。対して、規模の小さなクリニックでは、医療事務スタッフの数も少なく、受付や会計、レセプトなど、医療事務の業務をひととおり任されることも珍しくありません。

一般事務と医療事務の給料の違い

どの職業に就くにせよ、給料は、やはり気になるものです。医療事務と一般事務で、差はあるのでしょうか。 給料は、医療事務、一般事務ともに、それぞれの医療機関や企業によって個々に異なるため、一概に、どちらが「高い」「安い」と言うことはできません。しかし、全体の平均から、傾向を知ることはできます。

ある調査によれば、モデル年収の平均額は、「医療事務・医療秘書:439万円」に対して、「一般事務:352万円」となっています(※1)。また、一般事務の勤務先として多くを占める一般企業は、景気の変動などで業績を左右されることもありますが、医療機関は景気の変動にあまり左右されない傾向にあります。安定収入を得るという観点からは、一般事務よりも医療事務の方が、より安心かもしれません。

一般事務と医療事務の勤務時間の違い

医療事務のお仕事は、勤務する医療機関の診療日・診療時間によって、勤務時間が異なります。一例として、平日は8時半から17時まで、土曜日は半日診療で12時半まで、日曜・休日は休診などのスケジュールが多いようです。これらの時間内で、正職員やパート・アルバイトなど、それぞれの勤務形態に応じて、ローテーションを組んで勤務することになります。

一般事務は、勤務先によってさまざまです。正社員などフルタイムの勤務であれば、8時半~10時頃に始業し、17時半~19時頃の終業までの8時間勤務(1時間休憩)が、ごく一般的な例だと言えるでしょう。

では、残業時間はどうでしょうか。政府が提唱する「働き方改革」が、一般にもかなり認知されてきましたが、それでも残業がゼロの職場は、まだまだ少ないと言えます。医療機関では、レセプト作成、点検業務がある関係で、勤務先によっては月末と月初に残業が多くなることもあります。一般事務の残業時間は、やはり勤務先の業種や規模によって、さまざまです。経理や営業事務など、売上や請求・支払いにかかわる事務職の場合は、月末に処理が集中して、残業も増える傾向にあるのではないかと見られます。

業種別の残業時間について、「営業事務アシスタント:11.0時間」「医療事務アシスタント:12.2時間」「一般事務アシスタント:13.3時間」「経理/財務事務アシスタント:18.2時間」という調査結果(※2)もあります。これも、それぞれの職種や勤務する医療機関、企業によって事情が異なりますので、一概には言えません。しかし、医療事務は、比較的残業時間が少ない傾向にあると見ることはできるでしょう。診療日・診療時間が明確で、患者様に対する時間外の対応業務がほぼないことも、関係しているのかもしれません。

一般事務と医療事務で求められる資格・スキルの違い

医療事務や一般事務として就職するために、それぞれ必要な資格やスキルには、どのようなものがあるでしょうか。

一般事務を目指すうえで、必ずしも、「この資格やスキルが必須」というものはありません。パソコンの操作であれば、一般的なスキルがあり、業務で使用されることが多いワープロソフトや表計算ソフトなどの使い方がわかっていれば、応募する際に履歴書に記載することができます。また、ビジネスマナーについても、ひととおり学んで身につけていれば、面接の際の態度や受け答えのなかから判断してもらうことができるでしょう。場合によっては、パソコンの操作に関する検定や、秘書検定などの資格を取得していれば、採用選考で優遇されることがあるかもしれません。しかし、基本的には、資格の有無が採否に大きく影響することはないと言ってよいでしょう。

医療事務では、少し事情が異なります。医療事務も、特定の資格やスキルを必須とする職種ではありません。求人案件のなかには、「未経験」「無資格」でも可としているものが見られます。しかし、医療事務のお仕事では、「医療保険制度や診療報酬についての知識」「レセプトコンピュータの操作スキル」など、一般的なビジネススキルではカバーできない、医療事務固有の知識やスキルが求められます。医療事務に関連する資格を持っていれば、それらの能力があることを客観的に証明できる強みとなりますので、一般事務と比べて、医療事務では資格取得のメリットが大きいと言えるでしょう。

一般事務や医療事務になるために必要な準備・費用

医療事務も、一般事務も、その職種に就くために決められたルートがあるわけではありません。それぞれの求人案件によって「高校卒業」「4年制大学卒業」などの条件を設けていることはありますが、特定の学校や学部・専攻に通わないとなれないといった制約がないのが一般的です。

ただし、ビジネススキルやビジネスマナーに関する資格、あるいは医療事務のように、その業種で働くために必要とされる資格を取得していれば、採用選考で有利に働く場合もあります。ここでは、何かしら有用な資格を取得することを、医療事務や一般事務に「なるための準備」と位置づけて、そのために必要な準備・費用について、例を交えて紹介します。

医療事務になるために必要な準備・費用

医療事務の場合、資格取得の過程で身につけられる知識やスキルが、実際の業務においても必要とされる面があります。そのため、就職する前に、資格を取得する人が多いようです。

資格取得に向けた学習の方法には、大きく分けて「1~4年制の専門学校に通う」「養成校で短期間の教育講座を受講する」「独学」の3つがあります。

専門学校は、朝から夕方まで授業を受けることが多く、働きながら通うのは難しいでしょう。費用は、地域や学校によって差がありますので、あくまで例ですが、2年制の場合で初年度納入金が93万円~140万円ほどです。2~4年制の場合は、2年目以降の年間学費が必要になりますので、負担は小さくはないでしょう。

一方、養成校で医療事務の教育講座を受講する場合は、それぞれの教育講座にもよりますが、おおむね2~4ヵ月ほどの期間で開講され、お仕事を終えた後でも通えるなど、時間の融通が利きやすいと言えます。また費用も、短期間で資格取得のための勉強のみを行うため、専門学校に比べると比較的安価に抑えられます。一例として、ニチイの医療事務講座の場合、通学は約9万円、通信は約5万円(いずれも税込価格)で受講することができます。

独学の場合、時間的な制約を受けにくく、また費用面でも安価というメリットはありますが、合格に向けて効率よく学ぶのであれば、養成校の教育講座などを活用するほうが、結果的には近道となるでしょう。

一般事務になるために必要な準備・費用

医療事務に比べると少ないかもしれませんが、一般事務への就職でも、あらかじめ資格を取得して臨むといった準備をする人はいるでしょう。就職後のお仕事に役立てられそうな資格としては、パソコンの操作スキルに関わるものや、ビジネス文書の作成スキルに関わるものなどが考えられます。

どちらも、「ビジネススクールなどの専門学校で学ぶ」「特定の資格取得に目的を絞った養成校の教育講座で学ぶ」あるいは「独学」が考えられます。やはり、専門学校の場合は、地域や学校により異なりますので、あくまで例ですが、2年制の場合で、年間88万円~118万円ほどです。医療事務の場合と同様に、2~4年制の場合は、年ごとに学費が必要ですので、やはり負担はそれなりになります。養成校の場合は、特定の資格に絞って教育講座を受講するなら、数千円~10万円ほどで比較的安価に学ぶことができると言えます。

一般事務と医療事務は、どちらを目指すべき?

医療事務と一般事務では、それぞれ活躍するフィールドも、業務の内容も異なります。もちろん、どちらのほうが優れている、あるいは待遇が良い、といった観点で、比べられるものではありません。自分自身が、「どのように働きたいか」「社会でどのように役立ちたいか」で選ぶべきではないでしょうか。

もし、「病気やケガで苦しんでいる人の力になりたい」「医療現場で頑張る医師や看護師をサポートしたい」という想いがあれば、医療事務のお仕事を通じて、その想いをいくらかでも実現できることでしょう。

「今はまだ、業界や商品、サービスを限定せず、さまざまな場所で働けるように可能性を拡げたい」と思うなら、一般事務の道へ進み、さまざまなスキルや経験を積み上げたほうがよいかもしれません。

医療事務を目指すにせよ、一般事務を目指すにせよ、自分自身がお仕事にやりがいを感じて働けることが、なによりも大切なことではないでしょうか。どちらも、とても魅力的なフィールドです。じっくりと考えて、ご自身に相応しい道を見つけてください。


[初回公開日 2021年11月26日]

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