2023年09月11日

医療事務の資格はどれを取るべき?選び方と各資格の概要、試験の内容まで解説

専門知識や技能を活かして長く働けるお仕事として、医療事務の人気は高く、また、医療事務の知識や技能にかかわる資格も注目されています。この記事では、これから医療事務として働こうと考えている人や、医療事務の資格を取得しようという人へ、医療事務の資格とは、どのようなもので、どのような種類があるのかを解説します。さらに、医療事務の資格を取得するために、知っておきたい基礎的な知識についてもご紹介します。

医療事務とは?

医療事務とは、病院や診療所などの医療機関で、事務作業を行う職種(および、業務に従事する人)のことを指しています。一般的な企業や団体の事務職と同様のお仕事に加えて、医療機関特有の業務もあり、そのため「医療事務」という名称で、ほかの事務職とは区別されています。

医療機関ならではの業務としては、次のようなものがあります。
・来院者の受付や、診療後の会計などの、患者様応対
・レセプト(診療報酬明細書)の作成や点検

特に、医療事務に固有の業務と言えるのが、2つめのレセプトにかかわる業務です。保険医療を行う医療機関は、健康保険組合などの保険者に対して医療費を請求するために、月に一度、明細書を提出します。この明細書が、レセプト(診療報酬明細書)と呼ばれるものです。レセプト作成は、医療事務が担う重要な業務の1つであり、特に専門的な知識やスキルが求められます。

医療事務に資格は必要?

医師や看護師、薬剤師などと異なり、医療事務には特に定められた資格はなく、資格がなくても働くことができます。現在、医療事務に関連する資格が複数ありますが、それらは医療事務に必要な知識やスキルを持っていることを証明するためのもので、資格がないと仕事に就けないというライセンス的なものではありません。

しかし、資格を取得することで、お仕事を探す際に、またお仕事を始めてからも、少なからずメリットがあると言えるでしょう。医師や看護師、薬剤師などの国家資格に比べると、医療事務の資格はそこまで難易度が高くなく、比較的取得しやすいのも特徴です。

医療事務の資格取得のメリット

では、医療事務の資格を取得することで、どのようなメリットが得られるのでしょうか。「資格を取得すれば、確実にそうなる」と断定することはできませんが、一般的に言われているのは次のような点です。

就職や転職の際に有利

医療事務の求人に応募する際に、資格を取得していれば、医療事務として必要な知識やスキルを持っていることの証としてアピールできます。特に未経験者にとっては、資格は心強い味方となってくれるでしょう。

実務に役立つ

就職してからも、医療事務の資格は有用です。医療事務のお仕事をスムーズに進めるために欠かせない知識やスキルは、(医療機関によって、細部の取り扱いが多少異なることはあっても)基本的な部分は共通です。資格取得のために学んだ内容が、就職した職場で役立つことは少なくありません。

ステップアップの入口になる

医療事務の資格を取得することがきっかけとなって、関連する別の資格を取得して、対応できる業務の領域を広げようというモチベーションが芽生えるかもしれません。また、医療事務の資格を取得することで、職場によっては、より責任の大きな業務を任される場合もあります。

給与面のメリットも

勤務する医療機関によっては、医療事務の資格取得者に対して、資格手当などが給与に上乗せされて支給される場合もあるようです。

医療事務の代表的な資格

医療事務の資格は、いずれも民間団体が認定する資格です。そのなかで、特によく知られている4つの資格について紹介します。

医療事務技能審査試験(メディカル クラーク®)

(一財)日本医療教育財団が主催する試験で、医科と歯科があり、合格者には「メディカルクラーク®(医科または歯科)」の称号が与えられます。試験創設からこれまでの総受験者数は170万人を超え、医療事務分野では最大規模(※)の資格試験です。受験資格は特に定められておらず、実務未経験者でもしっかりと学習すれば十分に合格を狙うことができます。
(※)(一財)日本医療教育財団ホームページより

試験の形式 在宅受験
出題範囲 [学科]医療保険制度、高齢者医療制度、公費負担医療制度、介護保険制度、医事法規一般、医事業務、診療報酬請求業務、医学一般、薬学一般、診療録
[実技]コミュニケーション(患者応対)、診療報酬請求業務
合格率 70~80%
講座受講期間の目安 3~6ヵ月

医療事務認定実務者®試験

全国医療福祉教育協会が主催する資格試験で、医療事務の実務における習熟度が問われます。

試験の形式 会場受験または在宅受験
出題範囲 [学科]医療機関での接遇とマナー、社会的マナーと医療機関の接遇、医師との連携、患者との関わり方、医療法と医療法施行規則、医師法と医師の役割、医療保障制度の概要、医療保険の給付、健康保険法と保険診療、後期高齢者医療制度、介護保険制度(サービス)の概要、診療報酬制度、マイナンバー制度、公費負担医療、請求と支払の仕組み、医療事務の流れ、日常業務、レセプト作成の基本、診療報酬の算定における取決めと算定方法
[実技]診療報酬明細書の作成・点検(外来)
合格率 60~80%
講座受講期間の目安 3~4ヵ月

診療報酬請求事務能力認定試験

(公財)日本医療保険事務協会が実施している資格試験で、医科と歯科があります。医療保険制度や、関連する法令などの知識が問われ、カルテを見ながら診療報酬明細書(レセプト)を手書きで作成する実技試験もあります。医療事務関連の資格のなかでは、比較的難易度が高いと言えるでしょう。

試験の形式 会場受験
出題範囲 [学科]医療保険制度等・公費負担医療制度の概要、保険医療機関等・療養担当規則等の基礎知識、診療報酬等・薬価基準・材料価格基準の基礎知識、医療用語及び医学・薬学の基礎知識、医療関係法規の基礎知識、介護保険制度の概要
[実技]診療報酬請求事務
合格率 30~40%
講座受講期間の目安 最短3ヵ月

医療事務管理士®技能認定試験

株式会社技能認定振興協会(JSMA)が主催する資格試験で、医科と歯科があります。

試験の形式 在宅受験またはインターネット受験
出題範囲 [学科]医療保険制度、公費負担医療制度、診療報酬点数の算定、診療報酬明細書の作成、医療用語等の知識
[実技]レセプト点検、レセプト作成(外来・入院)
合格率 50%前後
講座受講期間の目安 2~5ヵ月

医療事務以外の医療機関での事務に関連する資格

医療機関での事務に関連する資格には、受付・会計やレセプトの作成・点検などの医療事務のお仕事に直結する資格のほかに、次のような資格もあります。

・医師事務作業補助技能認定試験(ドクターズクラーク®)
(公社)全日本病院協会と(一財)日本医療教育財団の共催による資格試験。病院勤務医の負担軽減を目的として、医師の事務作業を補助する「医師事務作業補助者」の配置が、厚生労働省による医療機関評価の対象となったことで、「医師事務作業補助者」を置く医療機関が増えています。医師事務作業補助技能認定試験は、「医師事務作業補助者」に求められる、診断書などの文書や処方せんの作成、検査の予約など医師の事務作業を代行する際に必要な専門知識とスキルを有することを認定する資格試験です。試験の合格者には「ドクターズクラーク®」の称号が与えられます。
医療事務の資格取得を目的とした教育講座のなかには、医療事務の資格試験と併せて、医師事務作業補助技能認定の合格を目指せるものもあります。両方の資格に共通する学習内容も多いので、一緒に学んでみてはいかがでしょうか。

・医事オペレータ技能認定試験(メディカルオペレータ)
(一財)日本医療教育財団が主催する資格試験。医療機関で使われている医事コンピュータには、独自のルールが少なくありません。医事コンピュータに特有の操作・処理についての知識や技能を有することを認定する資格試験が医事オペレータ技能認定試験です。試験の合格者には「メディカルオペレータ」の称号が与えられます。 医療事務の資格講座を開講しているスクールのなかには、医事コンピュータの入力ルールや操作方法を専門的に学ぶコースを設けているところもあります。医療事務の資格を取得したら、次の目標として、医事オペレータ技能認定試験合格を目指してみてはいかがでしょうか。

・医療秘書技能検定試験
(一社)医療秘書教育全国協議会が主催する資格試験。医療秘書は、主に総合病院や大学病院など大規模な医療機関で、医師や看護師の秘書としての業務を行う職種です。「医療秘書技能検定試験」には、3級、2級、準1級、1級の4つの級が設定されており(1級が最上級)、それぞれのレベルに応じて、医療秘書の実務についての知識や、医療事務の基礎知識、医療の基礎知識が問われます。

・ホスピタルコンシェルジュ®検定試験
株式会社技能認定振興協会(JSMA)が主催する資格試験。総合病院や大学病院など大規模な医療機関で、来院した患者様の応対にあたる職種を指して「ホスピタルコンシェルジュ®」「医療コンシェルジュ」「メディカル・フロント・コンシェルジュ」などと呼ぶことがあります。「ホスピタルコンシェルジュ®検定試験」では、患者様とのコミュニケーションにおいて欠かせない接遇能力や、多様な問い合わせに応えられる広範な知識が問われます。

医療事務の資格を選ぶポイント

医療事務の代表的な4つの資格について、それぞれの特徴や試験形式、合格率(難易度)などをご紹介しました。
医療事務の基本的な知識やスキルを持っていることを証明するという点では、どの資格も大きく変わらないため、「どの資格を取ればよいのか、わからない」という方もいらっしゃるでしょう。たとえば、次に挙げるポイントで判断して挑戦する資格を選ぶのも、1つの方法かもしれません。

医療業界内での知名度で選ぶ

医療事務にはさまざまな資格がありますが、特に就職や転職活動においては、よりメジャーな資格を応募書類に記載したほうが、採用担当者の目に留まりやすいと言えます。たとえば、この記事で紹介している4つの資格などは、医療事務の資格のなかでも比較的知名度が高く、おすすめです。

就職の実績で選ぶ

通学で学ぶ講座や通信教育講座を利用する場合、募集案内やホームページなどに、講座修了者の就職実績を掲載していることがあります。多くの場合、それぞれの講座ごとに合格目標としている資格があるため、就職実績を参考にして受講する講座を選び、目指す資格を選ぶのも1つの手です。

資格取得のための講座が給付金の対象かどうかで選ぶ

通学で学ぶ講座や通信教育講座のなかには、国の「一般教育訓練給付制度」の対象として、支払った受講費用のうち20%(上限10万円)にあたる金額がハローワークから支給されるものがあります。対象の講座は、募集案内やホームページなどに給付の対象であることが記載されていますので、確認してみましょう。

自分に合った勉強方法を選ぶ

医療事務の資格を取得するための勉強方法には、この後の「医療事務の資格を取るための勉強方法は?」で紹介しているように、大きく分けて3つの方法があります。自分自身にあった方法を選ぶことで、そこから合格を目指しやすそうな資格が見えてくるかもしれません。

医療事務の資格を取るための勉強方法は?

医療事務の資格を取得するための勉強方法として、「専門学校や資格スクールに通う」「通信教育講座を利用する」「自分ひとりで学ぶ(独学)」の3通りが考えられます。それぞれのメリットとデメリットを見ていきましょう。

専門学校や資格スクールに通う

オーソドックスな方法として、医療事務のコースがある専門学校や資格スクールなどに通い、講座を受講して学ぶ方法があります。
メリットとしては、わからないことがあれば、すぐに講師に質問できることが挙げられます。また、資格取得という同じ目的を持つ仲間がいるため、お互いに励まし合い、ときに競い合いながら学ぶことができるのもメリットの1つでしょう。そのほか、充実したサポート体制で学習を後押ししてくれるのも、「独学」にはない魅力です。特に「自分ひとりで勉強するのは苦手」という人には、適した学習法でしょう。 一方で、学習する時間や場所が限られ、決められたカリキュラムに沿って一定期間通う必要があるため、「自分のペースで学習を進めたい」という人には、ベストな学習方法ではないかもしれません。

専門学校や資格スクールに通う

通信教育講座を利用する

さまざまな事業者が開講している、医療事務関連の通信教育講座で学ぶ方法です。
通信教育講座では、理解しやすいように工夫された教材で、医療事務の資格取得に必要な知識を効率よく習得できます。また、空いた時間など自分自身の都合に合わせて学ぶことができるので、自由度が高いこともメリットとして挙げられます。さらに、わからないことがあれば気軽に質問できるなど、学習のサポートも充実していることが多く、「通学」と比べて安価な点も魅力です。前述の「専門学校や資格スクール」と、後述の「独学」の、いわば"良いとこどり"ができるのが通信教育講座だと言えます。
一方で、基本的には自分ひとりで時間を作って学習を進めることになるため、「自分ひとりだと、なかなか勉強しようという気になれない」という人にとっては、ややハードルが高い方法かもしれません。

通信教育講座を利用する

独学する

市販のテキストや問題集などを使って、自分で学ぶ方法です。
安価に学べることが、独学の最大のメリットだと言えます。学習時間や場所の制約を受けることもありません。半面、自分自身でテキストや問題集を選び、自分で計画を立てて学習を進める必要があります。わからないことがあっても、基本的には誰も教えてくれません。「医療事務の資格を取得する」という強い意志を持って、モチベーションを保つことができる人向けの学習法だと言えます。

医療事務の資格は必須ではないけれど、資格があればなにかと有利!

医療事務の求人には、資格不問としているものもあり、資格がなくても求人に応募することは可能です。しかし、資格を取得することで、より採用される可能性が高くなります。ご自身の希望に近い職場と巡りあえるチャンスも広がるかもしれません。また、資格取得を通じて得られた知識やスキルが、実際にお仕事で役立つこともあるでしょう。さらに、先々もし転居することになっても、医療事務の資格があれば、日本全国の医療機関で、よりスムーズに再就職できることでしょう。
これから医療事務として働くことを検討されている方は、いくつかある医療事務の資格のなかから自分に向いていそうなものを選んで、チャレンジしてみてはいかがでしょうか。

医療事務の資格は必須ではないけれど、資格があればなにかと有利!
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