2024年08月20日

介護福祉士実務者研修の資格を取得すれば、喀痰吸引ができるのか?

実務者研修は、国家資格である介護福祉士の受験要件の1つであり、「介護の実務経験3年」の要件で受験する際に、併せて修了が義務付けられている研修です。介護の専門的・実践的な知識や技術が身につけられ、修了すると訪問介護事業所のサービス提供責任者に就くことも可能となる、介護のお仕事のキャリアアップを目指すうえで、欠かせない資格として位置づけられています。

実務者研修では、喀痰吸引などの医療的ケアについても学びます。喀痰吸引とは、痰を自分で出すことができない方に対して、吸引器などを使って痰を体外に排出させる医療的ケアのことです。

なお、実務者研修のカリキュラムに含まれていますが、実務者研修の資格を取得後、すぐに介護の現場で喀痰吸引ができるようになるわけではありません。

この記事では、実務者研修修了者が喀痰吸引をできるようになる方法についてご紹介します。

実務者研修の資格を取得すれば、喀痰吸引ができるのか?

喀痰吸引や経管栄養などは、看護師などの医療従事者にしかできない医療行為ですが、介護現場での需要の高まりを受けて、一定の条件を満たした介護職員であれば、医師や看護師の指示のもと実施できるように、2012年4月より法律が改正されました。

喀痰吸引や経管栄養などの医療的ケアについては、実務者研修で50時間の講義に加え、演習を受けます。しかし、実務者研修を修了したら、すぐに介護現場で医療的ケアができるようになるわけではありません。喀痰吸引などの医療行為を介護職員が行うためには、追加で喀痰吸引等研修を受ける必要があります。

介護福祉士実務者研修について、さらに知りたい方は、介護講座で累計120万人以上の修了生を輩出している「ニチイの介護福祉士実務者研修」のページも参考にしてください。

実務者研修の資格を取得したのち、喀痰吸引が行えるようになる方法とは

実務者研修修了者が喀痰吸引を行えるようになるには、喀痰吸引等研修を受講する必要があります。

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喀痰吸引等研修とは

喀痰吸引等研修で対象となる行為は、「喀痰吸引(口腔内・鼻腔内・気管カニューレ内部)」と「経管栄養(胃ろう又は腸ろう・経鼻)」です。研修は、以下の3種類があります。

第1号研修:不特定の方に、対象となる行為のすべてを行うための研修
第2号研修:不特定の方に、気管カニューレ内部吸引および経鼻経管栄養を除く、一部の特定行為を実施するための研修
第3号研修:ALSなどの特定の方に、その利用者に必要となる行為を実施するための研修

介護職員が業務で喀痰吸引などを行うために必要なのは、「第1号研修」です。第1号研修は、基本研修と実地研修に分かれており、介護福祉士の資格を取得していても、実務者研修を修了していない方は、両方の受講が必要です。実務者研修修了者は、基本研修が免除され、実地研修のみの受講となります。ここでは、実地研修からご紹介します。

■実地研修

実地研修は、次の通りに行われます。

  • 口腔内の喀痰吸引:10回以上
  • 鼻腔内の喀痰吸引:20回以上
  • 気管カニューレ内部の喀痰吸引:20回以上
  • 胃ろう又は腸ろうによる経管栄養:20回以上
  • 経鼻経管栄養:20回以上

実地研修が受けられるのは、登録喀痰吸引等事業者として認可を受けている施設に限られるので注意しましょう。実務者研修などを行っているスクールで手配してもらうこともできますが、認可を受けていれば、現在所属している事業所で実地研修を受けることも可能です。

また、所属している事業所が認可を受けていない場合は、認可を受けている別の事業所で受けることもできます。

■基本研修

喀痰吸引等研修の基本研修は、講義と演習に分かれています。実務者研修を修了していれば、以下にてご紹介する合計50時間の講習と複数の演習が含まれる基礎研修の受講は不要となります。

講習 合計:50時間

  • 人間と社会:1.5時間
  • 保健医療制度とチーム医療:2時間
  • 安全な療養生活:4時間
  • 清潔保持と感染予防:2.5時間
  • 健康状態の把握:3時間
  • 高齢者及び障害児・者の喀痰吸引概論:11時間
  • 高齢者及び障害児・者の喀痰吸引実施手順解説:8時間
  • 高齢者及び障害児・者の経管栄養概論:10時間
  • 高齢者及び障害児・者の経管栄養実施手順解説:8時間

演習

  • 口腔内の喀痰吸引:5回以上
  • 鼻腔内の喀痰吸引:5回以上
  • 気管カニューレ内部の喀痰吸引:5回以上
  • 胃ろう又は腸ろうによる経管栄養:5回以上
  • 経鼻経管栄養:5回以上
  • 救急蘇生法:1回以上

実務者研修の資格を取得した場合の、喀痰吸引等研修の費用

喀痰吸引等研修の費用は、第1号研修の場合6~20万円ほどです。実務者研修の修了者は、基本研修が免除されて実地研修のみとなるので、2~3万円が目安となります。また、実地研修先をスクールで手配してもらうのか、自分で探すのか、就業先で受けるのかによっても費用は異なります。

実地研修の費用は、介護施設や病院によって、研修内容すべてを含めた費用となっているケースや、1行為ごと、1項目ごとなど項目別に費用が設定されているケースがあります。また、保険料や消耗品費などが別途発生することもあるため、比較して選ぶとよいでしょう。

喀痰吸引等研修の合格基準について

喀痰吸引等研修では、2つの合格基準が設定されています。1つは、基本研修修了後に受ける「筆記試験」、もう1つは「実地研修での評価」です。
基本研修修了後の筆記試験は、正答率9割以上で合格となりますが、実務者研修取得者は基本研修が免除されているので、筆記試験を受ける必要はありません。

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実地研修での評価は、累積成功率70%以上であり、最終3回の行為を連続で成功させることが求められます。例えば、「口腔内の喀痰吸引」を10回行った場合、合格基準を満たすには7回以上、かつ、最後の3回は連続で成功している必要があるということです。

喀痰吸引等研修修了後の、資格の登録

実際に介護現場で喀痰吸引や経管栄養を行うためには、実地研修を修了した後に、(公財)社会福祉振興・試験センターで「実地研修を修了した喀痰吸引等行為」の登録申請が必要です。

登録には、都道府県庁または登録研修機関が発行した「喀痰吸引等研修修了証明書」、または登録喀痰吸引等事業者が発行した「実地研修修了証明書」などが必要なため、忘れずに持っていくようにしましょう。

実務者研修の修了後は、喀痰吸引等研修の受講でステップアップを目指そう

実務者研修の資格を取得しただけでは、喀痰吸引を行うことはできず、追加で喀痰吸引等研修を受ける必要があります。喀痰吸引等研修の中でも、介護職員に必要なのが第1号研修です。第1号研修は、基本研修と実地研修に分けられていますが、実務者研修の修了者は、基本研修が免除されるため実地研修のみとなります。

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喀痰吸引等研修修了後、介護の現場で喀痰吸引を行うためには、(公財)社会福祉振興・試験センターで「実地研修を修了した喀痰吸引等行為」の登録が必要です。業務を担う前に、登録までしておくようにしましょう。

実務者研修を修了するだけでもさまざまなメリットがありますが、喀痰吸引等研修を受講すると、さらなるステップアップを目指したり、転職の選択肢を広げたりと、プラスになることが多くあります。実務者研修を受講する方や修了されている方は、喀痰吸引等研修の受講を検討してみてはいかがでしょうか。

実務者研修をこれから受講する方は、介護講座で累計120万人以上の修了生を輩出している「ニチイの介護福祉士実務者研修」もご覧ください。

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