2021年11月01日

介護スタッフのお仕事について

人口の高齢化が進んだ現在の日本で、介護へのニーズは高まる一方です。介護のお仕事に関心をお持ちの方も、多いのではないでしょうか。この記事では、介護サービスに就く「介護スタッフ」について、実際の仕事内容や職場、1日のスケジュール、取得をおすすめする資格など、さまざまな面から解説します。

介護スタッフとは

介護サービスを行っている事業所では、さまざまな職種の人が働いています。そのなかで、「介護スタッフ」とは、どのようなお仕事をしている人を指すのでしょうか? この記事では、介護スタッフを、介護サービス利用者の身体に触れる業務に従事する人と定義します。先進国のなかでも人口の高齢化が特に進んでいる日本では、社会において欠かすことのできない「介護サービス」の担い手として、介護スタッフに対する需要は、今後ますます高まると見込まれています。

介護事業所で働く人は、介護関連の資格を持っているか、いないかで、関わることのできる業務が大きく異なり、身体介助など資格が必要な介護業務に就いているスタッフと、生活援助や有資格者のサポートなど、資格を必要としていない業務に就いているスタッフがいます。資格を持っていなくても、介護を行う事業所で働くことはできますが、介護スタッフとして、介護サービス利用者の身体に触れる業務を行うためには、介護に関連する資格を取る必要があります。

なお、資格があれば、介護の専門知識や技術を身につけた人として、未経験で就職しても、即戦力として活躍が期待されます。また、より上位の資格を取得することで、対応できる業務の幅が広がります。例えば、「介護福祉士実務者研修」という資格を取得すれば、訪問介護サービスの計画立案や管理業務などを行う「サービス提供責任者」として、働くことができるようになるのです。

介護を行う事業所で、「介護」以外の業務を行うスタッフとして働く場合は、必ずしも資格が必要ではないため、介護業界の"入り口"は広く開かれていると言えます。一方で、キャリアアップを目指して働くのであれば、資格が必要です。資格を取得し、かつ、経験を積み、さらに知識・技術を身につければ、将来にわたって幅広く活躍することができるでしょう。

介護スタッフの仕事内容

介護スタッフのお仕事は、大きく「身体介護」と「生活援助」に分けられます。また、これらの介護サービスに関連して、事務的な作業などを行う場合もあります。

「身体介護」は、"介護サービス利用者の身体に直接触れる"お仕事です。車いすへの移乗の介助や、歩行の介助、入浴の介助、トイレの介助などが含まれます。「身体介護」を行うことができるのは、介護関連の資格を持っている人に限られ、資格を持っていない人は、有資格者のサポート業務のみを行えます。

一方の「生活援助」は、介護サービス利用者の身体に直接触れない、"日常生活のサポート"です。例えば、介護サービス利用者自身の食事の支度・片付けや、洗濯、部屋の掃除などが含まれます。これらの日常生活のサポート業務は、介護関連の資格の有無にかかわらず行うことができます。

介護スタッフになったら、「身体介護」と「生活援助」の両方すべてを行うというわけではありません。お仕事の内容は、従事する介護サービスの形態などにより、少しずつ異なります。

例えば、訪問介護に従事する場合は、介護サービス利用者の自宅で「身体介護」と「生活援助」の両方を行うことが多くなります。一方で、デイサービスやグループホーム、介護付有料老人ホーム、特別養護老人ホームなどであれば、「身体介護」の業務や、そのサポートが中心となるでしょう。また、サービス利用者のために実施するレクリエーションの運営なども、介護スタッフのお仕事の1つです。

介護サービスの形態と介護スタッフの職場

介護スタッフが働く場所は、主に介護サービスを行う施設や事業所となりますが、従事する介護サービスの形態によっては、介護サービス利用者の自宅で働くこともあります。

居宅サービス

訪問介護

訪問介護は、介護スタッフが介護サービス利用者の自宅へ出向いて、食事や入浴、排せつなど、日常生活の介助を行う介護サービスの形態を指します。訪問介護に従事する介護スタッフにとっては、実際に介護業務を行う介護サービス利用者の自宅と、拠点となる介護サービス事業所が、お仕事の場となります。

デイサービス(通所介護)

デイサービス(通所介護)は、デイサービスセンターやデイケアセンターなどの施設で、介護サービス利用者に、機能訓練やレクリエーションなどを行う介護サービスです。デイサービスで働く場合は、施設内が職場となります。

介護付有料老人ホーム

民間の事業者やNPO法人などが運営し、自立して生活できる人から、要介護度5の人までを対象としている老人ホームを指します。要介護度が高くても入居できることから、高齢の要介護者にとっての"終(つい)の棲家"として選ばれることも多いようです。介護スタッフの働く場所は、施設内となります。

グループホーム

民間の事業者やNPO法人などが運営する居住系介護施設のなかで、認知症の診断を受けた高齢者向けに特化した施設が、グループホームです。集団生活を通じた、症状の進行緩和や自立支援を大きな目的としています。グループホームの介護スタッフも、仕事の場は施設内です。

施設サービス

特別養護老人ホーム(社会福祉法人・自治体)

主に社会福祉法人や自治体が運営にあたる、要介護度3以上の高齢者を対象とする老人ホームです。こちらも、要介護度が高くても入居できることで、"終(つい)の棲家"として入居する高齢者が多い傾向にあるようです。介護スタッフの職場は、施設内となります。

介護老人保健施設(社会福祉法人・自治体)

特別養護老人ホームが要介護度3以上の人を対象とするのに対し、介護老人保健施設は、要介護度1から要介護度5まで、より幅広い層を対象とする施設です。ここでは、長期入院していた入居者に対して、退院後に自宅生活に戻るためのリハビリテーションや医療ケアを行います。介護老人保健施設でも、施設内が介護スタッフの職場です。

介護スタッフの1日のスケジュール

介護スタッフは、どのようなタイムスケジュールで働いているのでしょうか? 例として、「グループホーム(日勤)」「グループホーム(夜勤)」「訪問介護(日勤・短時間勤務)」の各介護スタッフの、ある1日の勤務スケジュールを紹介します。

介護スタッフのやりがい・大変なところ

介護スタッフとして働くことを目指すのであれば、ほかの職種と比較して、どのような特徴があるのかを理解しておきたいところです。

介護サービスのお仕事に対して、大変そうだというイメージを持たれる方もいるかもしれませんが、大きなやりがいや達成感が得られるという一面もあります。

もちろん、介護スタッフ一人ひとりによって、自身のお仕事に対する印象やとらえ方は違いますが、ここでは、一般的に言われることの多い、介護スタッフの「やりがい」と「大変なところ」を、いくつか紹介します。

やりがい①「誰かの役に立てる」

どのようなお仕事でも、どこかで誰かの役に立っていると言えますが、とりわけ介護のお仕事は、誰かの役に立っていることを、はっきりと実感できるお仕事です。介護サービス利用者や、その家族から、感謝やねぎらいの言葉をかけられることも、少なくありません。

やりがい②「目標の実現を支える達成感が得られる」

介護サービス利用者のなかには、日常生活での動作や行動など、「これができるまで回復したい」という明確な目標を持って介護サービスを利用する方もいます。介護スタッフにとっても、介護サービス利用者自身が努力して目標を実現することは、大きな喜びです。介護サービス利用者が、日々のリハビリテーションなどを通じて、できなかったことが、一つひとつできるようになっていく姿に接することで、大きな達成感を得られるでしょう。

やりがい③「仲間と一緒に取り組む一体感」

介護サービスの働き方はさまざまですが、多くの場合、同僚と一緒に働く"チーム作業"となります。一緒に働く介護スタッフや、ほかの職種の同僚とも協力しながら、知恵を出し合い、目の前の問題を解決できると、充実感もひとしおで、仲間たちとの強い一体感を得られるでしょう。

大変なところ①「体力が必要」

介護スタッフのお仕事には、体力を使う場面もあります。例えば、身体介護で、自分自身よりも大柄な要介護者の身体を支えることもあるでしょう。しかし、正しい介護技術を習得すれば、自分自身の身体に過度の負荷をかけずに、介護サービス利用者の介助ができるようになります。

大変なところ②「夜勤があることも」

24時間体制で介護サービスを行う入居型の介護施設では、日勤の介護スタッフに加えて、夜勤のスタッフも必要です。夜勤と聞くと、「生活が不規則になりそう」「昼夜逆転の生活になりそう」と、不安に感じる人もいるでしょう。確かに、夜勤に入ることで、生活のリズムが変わる側面はあります。しかし、手当など収入面で優遇される場合が多いため、より収入を多く得たいという人であれば、検討してみてはいかがでしょうか。

また、家庭の事情や体力面から、「夜勤は難しそう」という人の場合は、日勤のみで働ける事業所を探すのも、1つの手段です。

大変なところ③「人手不足」

人口の高齢化にともない、介護施設の数は増加傾向にあり、介護サービスの現場は、人手不足の状態が続いています。

そのような状況のなか、今後も質の高い介護サービスを維持していくため、介護スタッフの"働き方改革"は、国レベルでの重要課題となっていて、改善が進められています。

介護スタッフにおすすめの資格

介護スタッフのお仕事には、関連する資格がいくつかあります。資格がなくても、事務職などとして介護事業所で働くことはできますが、例えば、食事や入浴の介助など「身体介護」の業務に就くには、資格を取得する必要があります。

さらに、介護の資格のなかでも入門的なものから、より上位の資格へとステップアップすることで、対応できる業務の領域が広がっていきます。介護スタッフとして長期間働き、キャリアアップを目指すのであれば、ぜひ、資格取得にチャレンジしたいところです。

ここでは、介護スタッフとして働くうえで取得しておきたい、または、いずれは取得を目指したい、おすすめの資格を紹介します。

介護職員初任者研修

いくつかある介護関連の資格のなかでも、もっとも基本的で、入門編ととらえられている資格が、「介護職員初任者研修」です。介護業務に就いたことがない未経験者でも、各種のスクールなどで所定の研修を受講・修了することで、資格を取得することができます。

介護職員初任者研修を取得することで、「身体介護」の業務を行うことができるようになります。介護スタッフとして、介護の現場で活躍することを目指すのであれば、ぜひ、取得をおすすめします。

介護福祉士実務者研修

「介護職員初任者研修」よりも、上位の資格として位置づけられているのが、「介護福祉士実務者研修」です。初任者研修よりも、学んで身につけるべきことは多くなりますが、それだけに資格取得で対応できるようになる業務も増えます。例を挙げると、訪問介護サービスの計画立案、実施、管理などの責任者である「サービス提供責任者」に就くことができます。

また、国家資格である「介護福祉士」試験を受験する場合、受験資格として、「介護福祉士実務者研修」の取得が定められています。

介護福祉士

介護関連では唯一の国家資格が、「介護福祉士」です。年に一度実施される国家試験に合格し、所定の手続きを経ることで、国に登録された「介護福祉士」として介護サービスに就くことができます。

「介護福祉士」となることで、介護スタッフを現場で束ねるリーダー職など、より責任ある立場で働けるようになる可能性が高くなります。

[興味がある方は、こちらもご覧ください]
介護のお仕事に就くために必要な資格とは?
介護職員初任者研修とは?

介護スタッフは、やりがいあふれるお仕事

日本は今、"超高齢社会"を迎え、介護サービスへのニーズも、ますます増え続けると見込まれています。 介護スタッフに求められる役割も、より一層大きくなるでしょう。身につけるべき知識や技術は多いですが、一つひとつ習得することで対応できる業務が増えて、社会に対する貢献度も高くなっていくでしょう。

誰かに喜んでもらったり、笑顔になってほしいと思っている人にとって、自分自身の努力が目に見えて実感できる介護スタッフは、魅力的なお仕事だと言えます。少しでも関心があれば、ぜひ、積極的にチャレンジしてみてはいかがでしょうか。

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